韓国宗教平和国際事業団(IPCR)と韓国宗教人平和会議(KCRP)が主催する「IPCR国際セミナー2016」(世界宗教者平和会議[WCRP]日本委員会共催)が9月2日から4日までの3日間、「東北アジア平和共同体構築のための課題」をテーマに、神奈川県横浜市の立正佼成会横浜普門館で開催された。2日目のセッションⅡの後、ACRP(アジア宗教者平和会議)セッションとして「ACRPにおける日本・中国・韓国の役割」が話し合われた。
初めに、コーディネーターの神谷昌道氏(ACRPシニアアドバイザー)は、スピーカーとパネリストに対し、「(9月2日に行われた)植松(誠)先生(日本聖公会首座主教)の基調講演のあのメッセージを重ね合わせて、国境を越えたもっと根本的な人と人との関係性から言えば、中国・韓国・日本として何ができるかということに加えて、『北東アジア人として』という共通のイメージを持って私たちに何ができるかという視点を持っていただけたらいいなと思う」と留意を促した。
スピーカーの畠山友利氏(ACRP事務総長)は、ACRPについて、同組織が1976年にWCRPを母体として、アジアの宗教者によりアジアと太平洋地域の平和構築を目指し、さらに世界平和の促進を目的として発足したと紹介。その上で、ACRPが昨年に策定した行動計画の概要について、1. 平和推進への取り組み、2. 紛争解決と和解への取り組み、3. パートナーシップの構築、4. 記念行事の実施、5. 組織とその持続性の強化、と説明した。
畠山氏は、今後、中日韓3国がACRPにおいて果たす役割について、これらの行動計画を具体的に実施する場合、1. 『平和推進の取り組み』では平和教育プログラムの実施や、地域、国内におけるさまざまな社会問題に対するアドボカシー(提言)活動および、市民に幅広く問題意識を投げ掛けるキャンペーン活動の展開を呼び掛けている、2. 紛争解決と和解の取り組みでは、5地域でのプログラムのうち、とりわけ朝鮮半島における南北の和解活動が挙げられ、そのためには中日韓3国の協力によって北朝鮮との対話をいかに実現・継続させるかが重要、3. 「パートナーシップの構築」では、今後世界の平和を醸成するためには宗教者のみならず、志を共有するあらゆる分野の組織、機能との連携が不可欠で、政治、経済、学術、民間組織などとの連携を深めていく必要がある、という3つの点を述べた。
「ACRPにおいて中日韓3国の存在感は大きく、常にいろいろな意味での期待が寄せられています。平和に向けたリーダーシップを理念と実践の両面で具体的に示していただくことは、他のアジア諸国にとって大変勇気づけられるものとなります」と畠山氏は語った。そして、「東北アジアにおける諸宗教者のさらなる連携は、将来の可能性としてASEAN諸国の宗教者との対話、西南アジア諸国のムスリム、ヒンズー教徒との対話、太平洋諸国の宗教者との対話など地域間における対話が可能となり、その対話を通し各地域が抱える課題の検討やその解決を目指すことができ、これまでの中日韓3国での経験を生かし役割を果たす上で大変重要です」と続けた。
最後に畠山氏は、「IPCR国際セミナーを通じた中日韓3国の対話が深まり、他のアジア地域に向けてその成果を遺憾なく発信していただくことを願う」と提案した。
続いて、パネリストの1人で聖公会神父のキム・グワンジュン氏(韓国宗教者平和会議[KCRP]事務総長、世界聖公会正義と平和委員会委員)は、畠山氏の発題を受けて、「IPCR国際セミナーを完成させるためには、北朝鮮も参加しなくてはならない。何とかしてこのセミナーに北朝鮮も参加させることが極めて重要だ。少なくとも来年の国際セミナーは中国で開催され、北朝鮮も参加し、4カ国の宗教家が一堂に会して、北東アジアの平和について議論する場になることを望んでいる」と語り、次回のIPCR国際セミナーを北京で開催することを提案した。
続いて、中国仏教協会副会長のヤンジュ法師がコメントし、「私どもは日本・韓国の皆様と一緒に、ACRP事務局長の指導の下で、その趣旨に従い、できる限り協力していきたいと考えている」と語った。
最後に、国富敬二氏(WCRP日本委員会事務局長)が畠山氏の発題にあった3つの計画についてコメントした。国富氏は、まず第1に、平和推進の取り組みに関し、平和教育プログラムやアドボカシー活動、キャンペーン活動の提案については、「青年プログラム・オフィサー養成講座」のセッションを加えるという提案を強く支持すると述べた。
第2に、紛争解決と和解の取り組みについて、グワンジュン氏が北朝鮮との対話の実現を提案した点は「ぜひ、来年度以降のIPCRセミナーを中国で開催し、実現していきたいと思う」と語った。第3に、「各界、各分野、各階層とのパートナーシップの構築の提案を強く支持する」と述べた。
国富氏は、「(中韓日)3国の交流を進めるときに、私自身の心を高めるために、具体的に、もし私が中国に生まれていたら、どんな人生を目指していただろうか、もし韓国に生まれていたならば、どんな人生を送っていたのだろうかと、時々思い浮かべるようにしています。すると不思議に温かな感情が生まれてきます」と結んだ。