【CJC=東京】ヒトの皮膚細胞から、心筋や神経などさまざまな組織へ分化する能力を持つ「ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)」を作り出すことに、京都大学再生医科学研究所の山中伸弥教授らのチームと米ウィスコンシン大学のチームがそれぞれ成功したことについて、バチカン(教皇庁)生命アカデミー委員長のエリオ・スグレシア司教は21日、「人(受精卵)を殺さず、たくさんの病気を治すことにつながる重要な発見だ」と称賛し、胚の使用に関連した「倫理的問題」とは見なさないとの見解を示した。
バチカンは、生命は卵子が受精したときに始まるという考え方に立ち、受精卵を壊してつくる胚性幹細胞(ES細胞)による研究に強く反対してきた。
同委員長は「(受精卵を壊す)これまでの研究方法は『人を助けるために人を殺す』という考え方に立った、誤った科学と言える」とした上で、「日本人と米国人はわれわれの声を聞いてくれ、研究に成功した」と語った。「現時点でわれわれはその研究を合法的とみなしており、それ以上の検証は行わない」と言う。山中教授は前年、バチカンで同アカデミーの研究に参加している。
同アカデミーは94年、生命の向上や保護に関する医学的および法的研究を支援するため、前教皇ヨハネ・パウロ二世が設立した。