日本ユニセフ協会が5日、東京都港区で児童ポルノ排除を目指す「児童ポルノがない世界を目指して」国民運動の第1回報告会を開催した。同協会は6日、公式サイトに掲載した報告の中で内閣府、活動家や著名人、NGOなど当日参加した賛同者・団体の意見を掲載し、児童ポルノの根絶に必要な法令の制定に向けた官民連携による国民運動の必要性を訴えた。
日本ユニセフは、児童ポルノの購入、入手、単純所持を禁止していない現行の「児童買春・児童ポルノ禁止法」では日本が国際的な捜査や取締りに参加できないとして、総合対策案の再検討を要請している。
警察庁が発表した2009年度の児童ポルノ事件の摘発数は935件(08年676件)と過去最悪。保護された被害者の子どもは411人(同338人)、そのうち未就学児童と小学生が65人(同39人)と、いずれも過去最多を記録した。
欧米諸国では児童ポルノの所持禁止が主流。日本でも所持の禁止を盛り込んだ児童買春・児童ポルノ禁止法改正案が自民党政権の09年に制定される見込みだった。だが、同案に反対する民主党による政権交代以降、同案は廃案となった。
政府は今年初め、児童ポルノを排除するための総合的な対策を関係各省庁が検討・推進する「児童ポルノ排除対策ワーキングチーム」を発足し、日本ユニセフなど民間の有識者との意見交換の場を設けた。
国民運動は5月、ワーキングチームに対し、児童ポルノ問題の啓発やブロッキング導入の推進、被害児童の発見と保護の推進、取締りの強化、児童買春・児童ポルノ禁止法の制定などを盛り込んだ「緊急アピール」を提出。これを受けて、チームはアピールの内容を部分的に取り入れた「児童ポルノ排除総合対策案」を発表した。
日本ユニセフによると、報告会では、官民連携による国民運動の発足に向けた準備状況、インターネット上の児童ポルノ画像・映像を遮断する手法「ブロッキング」の導入に向けた動きなどの報告があった。
音楽評論家の湯川れい子さんは、「弱者への最大の恥ずべき暴力行為が、まったく抵抗力を持たない子どもたちへの性的な強制行為です。さらにそれを商品化して売買することのおぞましさ、悲しさを何とか同じ人間として自分たちの手で取り除いていきたい」と日本の国民が率先して意識を高める必要性を強調した。(引用元:「児童ポルノがない世界を目指して」国民運動)
児童ポルノの規制をめぐっては、漫画家などから表現の自由の侵害などとの批判が根強い。写真や動画の規制が過度に進めば、実在する被害者がいない漫画やアニメにも規制が及び、創作活動に悪影響を及ぼすとして警戒するためだ。
単純所持を法律で禁止しているスウェーデンでは今年、日本で作成された児童ポルノ漫画を所持していた男が逮捕された。裁判では、「漫画である以上、実在の犠牲者は誰もいない」として罰金の支払いのみが命じられた。
この判決は地元メディアで大きく取り上げられ、児童保護を訴える意見と表現の自由を尊重する意見とで国が二分した。
地元紙の取材に対し、判決を下した裁判官は、完全に対立する2つの意見を十分考慮したと述べた上で、「児童ポルノ規制の本来の目的を考えるとき、(権利よりも)保護のほうが優先されるべきだと判断した。この法律の本来の目的は、ただ被害者本人である児童を保護すること以上に、児童一般を保護することにある」と指摘している。(引用元:http://www.thelocal.se/27984/20100725)