キリスト教NGOのワールド・ビジョンは、先月27日に南米チリで発生した大地震の緊急支援で、首都サンティアゴなどで生存者へ対する支援物資配布を開始した。被災者2万5000人に配布する計画で、空輸が可能になり次第、震源に近く大きな被害が出たチリ第二の都市コンセプシオンなどでの配布も開始する。
首都サンティアゴ、被害大きいコンセプシオンの2カ所に活動拠点設置へ
ワールド・ビジョン・ジャパン(東京都新宿区)によると、ワールド・ビジョンは地震発生翌日の同28日には、緊急人道支援専門のスタッフ6人をコンセプシオンに派遣。サンティアゴとコンセプシオン南部の2カ所に活動拠点を設置し、支援活動を行う計画だ。
ワールド・ビジョンは約30年にわたってチリで支援活動をしており、現在も100人近いスタッフが活動している。現地からの報告によると、支援地域でも水道や電気などが寸断され、多くの建物が崩壊するなどの被害が出ている。学校でも、校舎に被害があり新学期の開始が延期されるなどしている。
現地入りした調査チームによると、現在も多くの人々が路上やテントでの生活を強いられている。チリ大統領府の発表によると、2日までに地震による死者は795人に達した。現在も捜索活動が続いており、死者は今後もさらに増える見込み。
最大30メートルの津波 調査スタッフ「完全に消滅してしまった」
日本にも到達し東北地方で被害が出た津波はチリでは最大30メートルに達したと見られ、同国中部のコンスティトゥシオンでは津波により400人以上が死亡したと見られている。AFP通信によると、今回の地震の死者のうち500人が沿岸部で犠牲になった。
海岸近くに建っていた木造の家屋は200メートル以上も押し流され、鉄筋コンクリートの建物も完全に崩壊。太平洋に注ぐマウレ川では海水が逆流し、川から約300メートル離れた地域まで家屋の残骸や自動車などが埋め尽くした。
津波は地震発生約30分後に発生し、約3時間続いた。大型の津波は計3回発生し、現在もまだ700人が行方不明のままとなっている。
コンセプシオンの北約110キロにあり、津波の被害を受けた沿岸部の町コリウモを訪れたワールド・ビジョン調査チームのポーラ・セズ氏は「私はこのようなことを一度も見たことがない」「完全に消滅してしまった」と津波による被害の大きさを語った。
被災地で治安悪化 救援活動の妨害に
一方、被災地では略奪行為が拡大し治安の悪化が懸念されている。バチェレ大統領は治安維持のために、1万3000人の兵士を派遣すると発表。AFP通信によると、被災地では夜間外出禁止令に違反したとして、1日までに160人が拘束された。略奪者同士の争いで死者も1人出たという。被災地では現在、2月午後6時から8日正午までの外出禁止令が出されている。
被災地の治安悪化についてワールド・ビジョン関係者は、支援物資の輸送を遅らせていると述べ、救助活動に支障が出ていることを指摘。チリ軍による治安回復の支援が必要だと訴えている。
コンセプシオンの住民の間には「地震より略奪の方が怖い」という声もあり、支援活動とともに治安回復が急務となっている。