有名な古代イスラエルの王ダビデとペリシテ人ゴリアテの戦い(第一サムエル記17章)の場となった「エラの谷」にある要塞跡で発見された約3000年前の陶片の解読を行っていたイスラエル・ハイファ大学は7日、陶片の文字が世界最古のヘブライ文字であることを確認したと発表した。旧約聖書が書かれた年代については諸説あるが、それらを覆しさらに数世紀さかのぼる可能性もあるという。イスラエルの日刊英字紙『エルサレムポスト』などが伝えた。
要塞跡近くで約1年半前に発見された縦15センチメートル、横16.5センチメートルの陶片には、ヘブライ人やペリシテ人が使用していた原カナン文字で5列の文字列が記されていた。放射性炭素年代測定法によると、これらの文字は紀元前10世紀ごろのもので、ダビデ王(前1000年〜961年頃在位)時代にまでさかのぼるものと考えられるという。
解読を行ったゲルション・ガリル教授(聖書学)は、発見された文字列における動詞の使用方法や、文字列の内容自体が同地域の他の文化では見られないヘブライ語、ヘブライ社会特有のものであるとして、この文字列が初期のヘブライ文字だと判断したという。
「この文字列は社会的な声明文で、奴隷や寡婦、孤児について言及している。同地域の他言語ではほとんど使われていなかった『asah(働く)』『avad(仕える)』といったヘブライ語特有の動詞が使われている。特に、文字列の中で数回出てくる『almanah(寡婦)』のような単語は、他言語では違った記述がされており、ヘブライ語特有のものだ」と説明する。
一方、ガリル教授は、今回の文字列の解読は、紀元前10世紀ごろにもヘブライ文字が使われていたということを示すもので、この時代に聖書や聖書の一部について記述する能力がなかったとする現在の研究を覆す可能性があると指摘している。
解読された文字列は下記の通り。
あなたは働いてはならない、しかし(主を)礼拝しなければならない
奴隷、寡婦を裁け 孤児を裁け
(そして)寄留者を。赤子のために弁護しろ 貧しい人々のために弁護しろ (そして)
寡婦のために。王によって貧しい人々の復帰を助けよ。
貧しい人々(と)寡婦を守り、寄留者を助けよ。