日本キリスト教協議会(NCC、輿石勇議長、東京都新宿区西早稲田)は、先月10日に発生した在沖縄米海兵隊員タイロン・ルーサー・ハドナット2曹兵士(38)による女子中学生への強姦事件について、同事件が「重大な人権侵害」であるとして、ジョージ・Wブッシュ米大統領や福田康夫首相らに向けた抗議声明を発表した。
NCCは声明で、今回の事件が基本的人権の侵害に他ならないとして、軍隊を駐留させる責任の重さを実感するように訴えた。また、日米両政府に対して、再発防止策の実施、被害を受けた少女への謝罪と補償、加害米兵の厳正なる処罰のほか、日本政府に対しては少女への十分な精神的ケアーを行うよう求めた。
一方声明では、沖縄に駐留する軍隊の存在自体が暴行事件を引き起こす原因であるとして、米軍の配備強化中止、米軍基地撤退も合わせて求めた。
同事件を巡っては、被害者の女子中学生が29日、「そっとしておいてほしい」と告訴を取り下げたため、ハドナット2曹は不起訴とされ、同日釈放された。強姦罪は、被害者の告訴がなければ起訴できない親告罪で、那覇地検は親告罪以外の罪での起訴について、被害者の気持ちを考えた上で、他の罪で起訴するのは適当ではないと判断したとしている。
今回の釈放について仲井真弘多・沖縄県知事は1日、「このような事件は決して許されることではない」とコメントする一方、「被害者および家族の心情に配慮することが大切」と指摘した。
米軍側も、ケーシー米国務省副報道官が29日の記者会見で、釈放について米軍人は「米国の法律を順守する義務もある」と指摘、「さらなる法的手段を検討することになる」(共同)と発言し、米軍が独自に捜査を継続すると語った。事件をめぐっては、同27日に訪日したライス国務長官も、福田首相らとの会談で遺憾の意を表明している。
声明はNCCの平和・核問題委員会の平良愛香委員長、女性委員会の丹野信子委員長の連名で、ブッシュ米大統領、福田首相の他、ジョン・トーマス・シーファー駐日米国大使、石破茂防衛大臣に向けて出された。