【CJC=東京】ENI通信によると、パレスチナのキリスト教指導者が、パレスチナ自治区へのイスラエルの占領終結を呼び掛ける声明を発表した。占領は「神と人類に対する罪」だとして、世界の教会に支援を訴えたもの。
「イスラエルの占領というパレスチナ市民に対する不正行為は、抵抗しなければならない悪だ」と指導者は声明で指摘した。「抵抗はキリスト者にとって権利であり義務である。しかしそれは論理だけでなく愛を伴った抵抗だ。だから創造的な抵抗である。敵の人間性を引き込む人間的な道を見つけなければならないからだ」と言う。
ベツレヘムで12月11日行われた会合で公表された声明を、提唱者は、「カイロス・パレスチナ」文書と名付けた。カイロスは聖書で、神から与えられた挑戦、恵み、機会の時を示すギリシャ語。
関係者は、南アの教会が1980年代半ばに発表したカイロス文書に今回の声明を関連付けている。カイロス文書は、教会とそれより広範な市民を、アパルトヘイト(人種隔離政策)の終息に導くために協力するよう手助けしたもの。
「声明は全世界の国際的な共同体に、パレスチナ市民の窮状を直視し、国際法を順守するようイスラエルに圧力を掛けることを呼び掛けるものだ」と広報担当のリファト・カシス氏がENI通信に語った。
「平和とその道筋についての議論が17年にわたって続けられたにも関わらず、何事も起こらず、事態は悪化する一方だ。紛争についてより倫理的な展望を行うべき時であり、それは宗教指導者から発せられるべきだ」とカシス氏は言う。
声明の正式標題は「真実の時――パレスチナ市民の苦難の核心からの信仰、希望、愛の言葉」。
声明にはカトリック教会指導者、前ラテン典礼ミケル・サバ総主教、ルーテル教会エルサレム監督のムニブ・ヨウナン氏、ギリシャ正教会エルサレム総主教座のテオドシオス・アタラ・ハンナ大主教らが署名している。
イスラエルの、自衛のためだとする正当化論を否定して、パレスチナのキリスト教指導者は、もしも占領がなかったら「抵抗もなく、恐怖も、不安もなかった」と述べている。
今回の動きはパレスチナに存在するキリスト教各派のほとんどの指導者と著名な神学者をまとめたものとなった、とカシス氏は言う。
世界教会協議会も文書作成を円滑に進めることに援助している。またイスラエル・パレスチナ紛争について立場の異なる加盟教会を含めて全世界の教会に呼び掛けを行っている。
署名者は、声明がキリスト者に対してだけでなくイスラム教徒やユダヤ教徒にとっても「重大かつ重要」なものだ、と言う。隣人であるイスラム教徒に対して、「愛と共存のメッセージ」を送り、狂信と極論を拒否するよう促した。また全世界に、イスラム教に対して無知からくる「敵だとか誇張されたテロリスト」といった見方を拒否するよう呼び掛けた。同じくユダヤ教徒に向かっては、過去の闘争にも関わらず共存の可能性があることを確認した。
キリスト教指導者は、反ユダヤ主義やイスラム嫌いなどの差別を全て非難した。
キリスト教世界に広く、「イスラエルのパレスチナ占領について真理を語り、真理の立場を取る」よう呼び掛けている。そして「今苦しんでいる不義と、占領が私たちに課した罪を、神学で取り繕わないよう」世界の教会に促している。