米下院本会議は8日、宗教や人種、民族などへの差別に限定していた「憎悪犯罪」の定義を拡大し、同性愛者や同性愛行為、性別の自意識などに対する攻撃を含める修正案を可決した。伝統的な家庭観を訴えるキリスト教系団体からは「言論と信教の自由を制限することになる」と法案を批難する声が出ている。
修正案は2010会計年度(09年10月〜10年9月)の国防予算の政策を定める国防予算権限法案修正案の一部として採択された。上院が来週にも承認し、オバマ大統領の署名を経て法令化される。
大統領は同性愛者の権利拡大を訴える集会に出席するなど同性愛を擁護する姿勢を示しており、法案を承認する可能性が濃厚だ。
米キリスト教会では意見も様々だ。フロリダ州ノースランド教会(教会員数1万2千人)のジョエル・ハンター牧師など、民族、宗教、政治や思想の表現に対する攻撃を禁止する同法を支持するキリスト教指導者は少なくない。
だが、同性愛や両性愛を保護する州法令は既に数多く存在する。このため、定義拡大で改めて保護する必要性は無いと主張する保守派の牧師も多い。
「法案は性行為の権利を認めるためだけに修正されたようなもの」と、中絶合法化や性行為の低年齢化など家庭問題を幅広く扱う保守系有力団体、家庭調査協議会(訳注)のトニー・パーキンス代表は語る。
同代表は「国民は法の下で平等に保護されるべきだ。犯罪行為や個人のもめ事による暴力の被害者よりも、政府主導で政治的に形成された分類に属する被害者を手厚く保護するのか」と強く批判している。
訳注: 家庭調査協議会=Family Research Council