【CJC=東京】米聖公会は7月8日から17日まで、カリフォルニア州アナハイムで開催した総会で14日、同性愛主教の叙階を3年前から停止していた措置を解除することを、圧倒的多数の賛成で決定した。世界聖公会共同体に属する各聖公会からは、一致のためには叙階禁止が必要だという警告を押し切ってのこと。
3年に1回開かれる総会では、「聖公会内のいかなる聖職にも」同性愛者がその生涯を捧げるよう「神は召し出されまたこれからも召される」と、出席した主教、司祭、信徒代表の大多数が主張した。
総会の信徒と司祭で構成される部会では7割以上が停止撤回を採択、主教部会では2対1の割合だった。
ニューハンプシャー教区の公然同性愛者ジーン・ロビンソン主教は、「これは、教会のために喜ぶべき日だ。いやもっと具体的には、全てを完全に包括することを再度支持した聖公会にとって喜ぶべき日だ」と自らのブログに書き込んだ。
また最終日の17日、各州で民間人同士の結合を合法的に認知している所では、司祭が同性間の結合を祝福することを認めた。世界聖公会共同体内部での抗争がさらに深刻化することは必至だ。
総会は、同性間の結合を祝福する典礼制定を検討し、2012年の次回総会に報告することを決めた。これが進めば米聖公会では結婚の定義を変更することになろう。現在は、結婚の正式定義は1人の男性と1人の女性との一つの結合、とされている。
米国では現在、主流派の中では合同キリスト教会(UCC)が同性愛者間の結婚を認めている。福音ルーテル教会も8月の総会で認める可能性がある。一方、福音派やモルモン教会などは同性愛関係を罪とし聖書で禁止されている、という立場。
ロビンソン氏が2003年に主教に叙階されたことは、全世界7700万人を擁する聖公会共同体に激論を呼ぶことになった。特に信徒が急増している南半球では同性愛は罪深く、聖書の教えに反するという見方が多い。
霊的最高指導者カンタベリー大主教ローワン・ウィリアムズ氏は、2008年夏、世界から主教600人が集まったランベス会議で、同性愛主教停止が解除されたら、それは共同体にとって「重大な危機」を迎える、と警告していた。
今回総会で、ウィリアムズ氏は「共同体の中の多数と共に、分裂へ向かわせるような決定をしないことを望み、祈る」と述べていた。
2003年のロビンソン主教選出以来、世界聖公会では指導的な大主教や国際組織の多くがこれ以上同性愛主教を選出したり、叙階しないよう警告を発していた。
すでに、南半球の大主教を初めとした何人かが、同性愛に親和的な方策に反対して米聖公会との関係を断ち切っている。米国内でも、4教区が同性愛方策に反対、数十の教区が離脱して6月22日、並行組織『北米アングリカン教会』を設立した。
シンクタンク『アングリカン・コミュニオン研究所』は、「米聖公会はすでに世界聖公会の大多数との交わりから外れている」と言い、さらに多くの教区が聖公会を離脱する、と予測した。
米聖公会の公式メディア『エピスコパル・ライフ』によると、アラバマ教区のヘンリー・パーリー主教は、停止措置解除に反対、「包括的な教会であることを私たちのために切望しているが、分裂した教会を望むものではない」と語った。「この問題に取り組むには、より大きな聖公会共同体の一部であることが必要だ」と言う。
同性愛主教に関する決定はまた米聖公会の会員に、聖公会共同体に「可能な最大限まで参加する」思いを起こさせ、一方で世界の聖公会には米聖公会が2007年をとって見ると世界共同体予算の3分の1にあたる66万ドル(約6億5000万円)を負担していることを気づかせることになった。
カサリン・ジェファート=ショリ総裁監督が選出されて以来、同性愛者が主教候補とされた教区もあるが、実際には選出されていない。ジェファート=ショリ氏は7月13日に停止解除に賛成投票した。
同性愛に親和的なグループ『インテグリティ・USA』回答のスーザン・ラッセル司祭は、今回の決定が「米聖公会の“カミングアウト”(公然化)過程に1歩を進めたものであり、神の包括的な愛が、公然化されていないまま実施されている信仰の共同体を求めている人たちに『来て見てください』と強く訴えるものになる」と指摘した。