【CJC=東京】インドでテロが続発している。人口約11億人の宗教構成は、8割を占め、政治・経済・社会などでも優勢なヒンズー教に対し、イスラム教(14%)、キリスト教(2・5%)、シーク教(2%)、仏教(1%)などと、複雑。さらに地域によってその比率も異なり、都市部ではヒンズー教徒が半数以下のところもある。
インドでは、地方・州によって「改宗禁止法」がある。出自(ジャティ)である宗旨を変えてはならない、としているが、実態はヒンズー教徒の改宗を阻止するためのもの。ヒンズー教徒の懸念が、ジャティを離れる改宗者の増大にあるのは、社会秩序の基盤が揺らぎ、ヒンズー教の優位を失わせることにつながる。
イスラム教徒やキリスト者が「改宗禁止法」反対の声を上げること自体が紛争の原因にもなっているが、せめぎ合いの後、同法の改変、廃止を決めたところもある。
今夏以降、爆弾テロが多発する異常事態が続いている。連邦政府は、イスラム教徒とヒンズー教徒の対立をあおる狙いが事件の背後にあると見ている。バングラデシュなどを拠点とするイスラム過激派組織の連絡団体『インディアン・ムジャヒディン』(IM)の犯行との見方もあるが、IMの実態は不明だ。
ヒンズー教徒とキリスト者との対立は、キリスト者の多くがヒンズー教からの改宗者であることが、背景にある。東部オリッサ州では、1970年代に1万4000人弱だったキリスト者は現在約8万人という。ヒンズー教側には「再改宗」を勧める動きも活発化している中で、インドで伝道に力を入れている集団『ニューライフ・ミッション』の動きがヒンズー教徒の敵視を買ったと見られる。
ヒンズー教過激派は、キリスト教宣教師が、無料で教育したり医療活動を行うことで、貧困層や最下位のカースト層を「買収」している、と言う。
オリッサ州では、7月ごろから、農村地帯のキリスト者が襲われ、家を焼かれたり、少女が強姦殺人されるなどの事件が続発、一部のキリスト者が難民化している。8月に入って、キリスト者のデモ行進が行われたがいずれも平和的なものだった。23日、カンダマルでヒンズー教指導者ラクスマナンダ・サラスワティが射殺された。これがヒンズー教徒の怒りを買い、事態は泥沼化の様相を深めた。狙撃したのはキリスト者だと主張されたものの、マオイスト(毛沢東主義者)・テロ集団の幹部との説もある。
オリッサ州で10月1日、キリスト者の住居300家屋以上が放火され、1人のキリスト者女性が殺害された。8歳の子どもを含む6人も重傷を負った。同州では、キリスト者に対する暴力が先鋭化した8月24日以来、10月1日までに、迫害で命を失ったキリスト者は60人。破壊された教会は178、放火された家屋は4600軒、被害を受けた教会系の学校は13に及ぶ。避難民は5万人以上で、負傷者の数は約1万8000人に上った。