欧州連合(EU)各国外相らは21日、キリスト教徒への攻撃を非難し、キリスト教を迫害する各国に対し、礼拝の自由を保護するように呼びかける声明文を発表した。
各国外相らは「EUは最近の暴動・テロ活動を通してなされているキリスト教徒、イスラム教巡礼者その他宗教団体の活動に対する不寛容・差別深い懸念を示しています。残念なことに、世界で宗教の不寛容から免れられる地域はどこもありません」と声明文で発表した。
また実際に信仰のために暴力を受け、殉教する人々が存在する国々に対し哀悼の意と連帯感を表明した。EUは宗教の自由を促進・保護し、各国が宗教的少数派含む国民の安全を保護するように呼びかける活動を行っており、外相らはこの活動を今後も力強く取り組んでいくことを改めて表明し、「すべての宗教団体に所属する人々は、攻撃や妨害を受ける恐れを抱くことなくその信仰・礼拝活動を自由に行う権利があります。EUでは宗教を分裂のツールとして利用しようとする人々に対する対策を強化していく必要があると考えています。このような行為は宗教過激派の活動や暴動を誘発させます。EUは提携各国との活動を継続し、宗教の自由・人権の保護を確保する活動を促進していきます」と声明文で発表した。
これまでEU外相の一部から、声明文に「キリスト教徒」の言葉を除くべきだとの声もあったが、今回の声明文には「キリスト教徒」という言葉がはっきりと明記された。
ブリュッセルに拠点を置く家族・自由および公正な社会のための活動を行うNGO欧州ディグニティ・ウォッチによると、EUの5人の外相およびキャサリン・アシュトン欧州連合外務・安全保障政策上級代表は1月のEU会合において、この数カ月中東地域で生じているキリスト教徒への迫害の嵐にもかかわらず、宗教に対する迫害を非難する声明文の中に「キリスト教徒」という言葉を使用することを拒否する意向を示した。中東全域のキリスト教徒がここ数か月間にわたって深刻な迫害を経験している。イラクでは首都バグダッドの教会で銃撃がなされ、数十人が殺害された。エジプトでは20人以上のキリスト教徒が年明け早々アレクサンドリアの教会への爆撃で殺害された。これら双方の事件はキリスト教徒に対する無差別攻撃によってなされた。
欧州ディグニティ・ウォッチはEU外相らによる声明文について、中東で迫害に遭っているキリスト教徒にとっては、EUのような大きな国際機関による一致した声明が強い励ましになるとし、「注意深い言い回しをしており、政治的に正しい見解を示した」と歓迎する一方、外相らの声明文でキリスト教徒について一度しか言及しなかったことについては非難し、「EUはキリスト教徒に対してのみ排他的に行われている残虐行為についてより強い非難声明を行うべきだった」と述べた。
なお国連人権理事会は23日と25日にかけて、反政府デモにより政情不安が深刻な状態となっているリビア政府に対して、反政府デモ鎮静化に向けた特別会合を開くことを発表した。同会合もEUが提案し、これに米国および日本などが賛同した。リビア政府に対して最高指導者であるカダフィ大佐らの資産凍結などの制裁措置に関する協議が行われている。リビアに関してイタリア政府は、リビア政府の崩壊によって30万人近くの難民がイタリアに流出してくる可能性があると懸念を示している。