【CJC=東京】バチカン(ローマ教皇庁)で長く中国問題に取り組んでいた教皇庁立外国宣教研究所のベルナルド・セルヴェッレラ神父は、カトリック代表者会の開催など、最近の動きに「1950年代に戻った」と懸念している。
同神父は研究所の『アジア・ニュース』の編集者。「率直に言って、今回の選出を見ると、毛沢東時代に、愛国会設立当時に戻ったのだ」と指摘する同神父は、北京政府を厳しく批判してきた。また教会の政権との関係にも慎重論だが、12月9日、カトリック通信(CNA)とのインタビューでも楽観論を戒めている。
今回、バチカンが認知していない組織の長選出に参加することを、教皇に忠誠を誓う司教に中国当局が強要したことで、教会内部に北京の共産党政権の意図についてあまりに楽観的だったのでは、と同神父は懸念している。
中国当局が、中国の教会を扱うのは、共産党であって、バチカンではないのだ、という明確なメッセージを発信した、と同神父は語った。今回の選挙が、「バチカンを傷つけ」、教会の一致への障害を設けたのだ、と言う。
バチカン側を楽観的過ぎと見るのは、教皇ベネディクト16世の中国のカトリック者と政府当局への姿勢が教会尊重に向かうと思っていたからだが、教皇が2007年に中国のカトリック者に宛てた公開書簡を発表以来、何も変わらなかった、と同神父。
中国側の強硬姿勢の背景に、同神父は、三自愛国会が、権力を維持し、教会財政を手中にあることを上げている。ローマとの関係改善が進めば、三自愛国会の存在自体が危うくなるからだ、と言う。またインフレ進行や貧富格差拡大に対する人民の不満抑制のために教会を監督下に置こうとしている、と見ている。
「中国側は宗教の自由の意味を理解出来ないのだと思う。良心に、また党や国家にではなく、神にのみ従うということの中にあるものを理解できないのだ」
中国のカトリック者には「礼拝の自由はあるが、宗教の自由はない」と同神父は説明する。