『どんなことにもくよくよするな!』(イーグレープ出版)の著者、佐々木満男弁護士のコラムを連載します。ラジオ大阪で現在放送中の人気番組「ささきみつおのドント・ウォリー!」(放送時間:毎週日曜日朝9:30〜、インターネットhttp://vip-hour.jp/で24時間無料配信中)でこれまでに放送された内容を振り返ります。「ミスター・ドント・ウォリー」こと佐々木弁護士が、ユニークな視点から人生のさまざまな問題解決のヒントを語ります。今日はその第4回目です。
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「どん底もいいもんだ!」
あなたは「どん底」に落ちたことがありますか。志望校の入学試験に落ちた。会社を首になった。恋人に振られた。夫婦喧嘩の末に離婚した。人によってさまざまな「どん底」がありますよね。
しかし、「どん底」もいいもんだ!って考えることもできますよね。なぜなら、「どん底」よりも下に落ちることはないからです。落ちた後は「どん底」から這い上がって登っていくだけですから。
「どん底」に落ちていく気持ちが苦しいだけなんですね。「ああ、いやだ」「ああ、こわい」「ああ、いったいどうなってしまうんだろう」「どんどん落ちていく、いったいどこまで落ちていくんだろうか」と、怖くて不安なんですね。
でも、落ちる所まで落ちて、「どん底」まで落ちてしまえば、そこで落ちつきます。後はじっくり、どう登っていくかを考えればいいんです。だから「どん底」もいいんですよ。
私の知り合いに、東大を出てホームレスになった人がいます。東大出のホームレスです。もう一人の友人は、立教大学を出てホームレスになりました。東京六大学を出ても、けっこうホームレスになってしまう時代なんですね。
彼は東大を卒業して一流会社で働いていたんですが、いろんなことがあって失業してしまいました。妻とも離婚です。精神不安定でアル中になりました。もう「死ぬしかない」と人生に絶望して死に場所を求めてあちこち探し歩いていたんです。ガス管を口にくわえたり、手首を切ったり、山のがけから飛び降りたりしてみましたが、死にきれませんでした。最後は、上野の山のホームレスの仲間入りをしたんですね。
東大キャンパスの象徴は、大きな安田講堂の時計台です。かつては東大生として安田講堂の時計台を見ながら、意気揚々と本郷キャンパスをかっ歩していました。ところが今や、上野の山から時計台をかなたに見ながら、しがないホームレスをしています。「なんという悲劇だ!」と、公園のゴミ箱からあさった焼酎びんを飲みほしながら、号泣したそうです。私も東大卒の一人ですので、彼の気持ちはよくわかりますねぇ。
ところが、上野の山ではホームレスの人たちに毎週炊き出しをしてくれるボランティアのグループがあります。炊き出しの温かいカレーライスとみそ汁欲しさに、彼も行列に並ぶようになりました。そのグループは、炊き出しをしながらホームレスの皆さんと一緒に賛美歌を歌ったり、彼らに聖書を教えたりしてたんですね。
彼も一緒になって賛美歌を歌ったり、聖書の話を聞いているうちに、だんだん心が安らいできました。生きる意欲が湧いてきて、もう一度やり直そうと決心しました。自分で聖書を熱心に学んで、なんと今ではキリスト教の神学校を出て牧師になっているんですね。
東大卒からホームレスへ!ホームレスから牧師へ! すごいですね。頂点からどん底に落ち、今度はどん底から頂点へ這い上がったんです。「ホームレスになって本当によかった。無意味な出世競争から離れて、心の平安と本当の幸せをつかんだからです!」。彼は人々にこう話しています。
安心してください。たとえ失敗してホームレスになっても、心の平安と本当の幸せをつかむことができるからです。ですから、どん底もいいもんですよ!
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佐々木満男(ささき・みつお):国際弁護士。宇宙開発、M&A、特許紛争、独禁法事件などなどさまざまな国際的ビジネスにかかわる法律問題に取り組む。また、顧問会社・顧問団体の役員を兼任する。東京大学法学部卒、モナシュ大学法科大学院卒、法学修士(LL.M)。