ナイジェリア中北部のカドゥナ州カガルコ地区で17日早朝、武装集団がカトリック神父の住居を襲い、神父ら数人を拉致し、1人を殺害する事件が発生した。
カトリック国際支援団体「エイド・トゥー・ザ・チャーチ・イン・ニード」(ACN)が、カドゥナ大司教区からの情報をもとに発表した。発表(英語)によると、襲撃を受けたのは、聖ステファノ小教区の司祭であるボッボ・パシュカル神父の住居で、パシュカル神父と他の多くの者が拉致された。また、アンソニー・イエロ神父の兄弟1人が殺害された。
カドゥナ大司教区は、パシュカル神父ら拉致された全員の安全と早期解放、また犠牲者の安らかな眠りを祈るよう、緊急の呼びかけを実施。ACNは、「ナイジェリアのキリスト教コミュニティーと聖職者を標的とした暴力行為に深い懸念を表明し、状況の進展を見守り、現地の教会と緊密に連絡を取り続けます」としている。
ナイジェリアはこの数年、北東部で過激派組織が台頭したり、キリスト教徒が多数派を占める中部農村地域で、過激化した遊牧民が多数の殺害事件を起こしたりするなど、治安が悪化している。身代金目的の拉致事件も横行し、教会指導者や学校が犯罪組織の標的となるケースも多い。人権団体は、ナイジェリアでは大規模組織による集団拉致が定期的に発生していると警告する。
AP通信(英語)によると、17日には北西部ケッビ州ダンコ・ワサグ地区でも襲撃事件が発生した。「高度な武器」を装備した武装集団が、女子寄宿学校を襲撃。少なくとも25人の生徒が行方不明となり、副校長が殺害された。18日時点で犯行声明を出した組織はなく、動機は不明という。
ナイジェリアは、国際迫害監視団体「オープンドアーズ」が世界各国の迫害状況をまとめた報告書「ワールド・ウォッチ・リスト」(WWL、英語)で、世界で7番目にキリスト教徒に対する迫害が深刻な国とされている。
ナイジェリアに関する2024年の報告書(英語)によると、同国では、WWLの23年期には4726人、24年期には3300人のキリスト教徒が拉致されている。また、最新の報告書(英語)は、25年期には少なくとも2830人のキリスト教徒が拉致されたとし、次のように報告している。
「(ナイジェリアの)キリスト教指導者らは、ワールド・ウォッチ・リサーチ(オープンドアーズの調査部門)に対し、彼らが特に北部と北中部において経験していることは、キリスト教コミュニティーを破産に追い込む計画的な試みだと語った。彼らは『世代を超えた破産』について語り、家族が拉致被害者を救うために土地や資産を売却せざるを得ない状況に追い込まれていると述べた」
ある教会指導者は、ワールド・ウォッチ・リサーチに対し次のように語ったという。
「キリスト教コミュニティーに属する私たちは、拉致が実際に、テロの目的を達成することを知っています。それは学校を閉鎖に追い込み、北部における西洋式教育の終焉(しゅうえん)をもたらすものです。それが、ボコ・ハラム(イスラム過激派組織)の目的です。キリスト教徒は(拉致された)牧師を解放しようと団結(して身代金を払おうと)するため、拉致は家族や教会全体を破産させ、貧困に陥れます。それがキリスト教コミュニティーの離散を招いているのです」
オープンドアーズは過去数年にわたり、一貫してナイジェリアでは毎年、世界の他の国々を合わせた数よりも多くのキリスト教徒が信仰を理由に殺害されていると報告している。その数は、WWLの25年期だけでも3100人に上る。

















