今年の9月と10月に英語でそれぞれ順に出版された、英国の著名な神学者、アリスター・E・マクグラス氏(オックスフォード大学教授)の最も代表的な著書である国際的なキリスト教神学の教科書と、それに伴う資料集の原書最新版。『Christian Theology: An Introduction(キリスト教神学入門)』は第6版、『Christian Theology Reader(キリスト教神学資料集)』は第5版となっている。
国際的な出版社である版元のWileyは、25周年を記念したこれらの最新版で、神学入門は内容が「完全に書き換えられ」、資料集も「完全に改訂され更新された」としている。著者によれば、この資料集の起源は1990年に自身が教えた講座だという。ただし、初版は神学入門が93年、資料集が95年となっている。
神学入門では、カリスマ運動の台頭を反映して聖霊論が新しく加わるなど、内容構成が旧版の第5版(2010年)とは異なっており、その違いの比較に関する項目も含まれている。また、ポストコロニアル神学やフェミニスト神学、世界の神学の進展などに関する内容が増えている。第1部では、神学の歴史における顕著な時代やテーマ・人物、第2部では神学の源と方法論、第3部ではキリスト教神学の主なテーマが扱われている。
一方、資料集は、2千年にわたるキリスト教の歴史の中から200を超える出典を選び、350を超える神学資料を収録。それぞれに導入や解説、設問が付いている。また、世界のキリスト教とフェミニスト神学・解放の神学・ポストコロニアル神学、女性の神学者や発展途上諸国の神学者に関する資料が新たに含まれているほか、討論のための新しい設問や事例研究などもある。
両書ともこれまでと同じく、特定の教派や考え方に偏っていないという。版を重ねて、世界のさまざまな大学や神学校で使われた経験や反響を踏まえて、比較的分かりやすい内容となっているのも特色といえるだろう。
さらに、神学入門では、ユーチューブに著者自身が出演している本書に関する動画(英語)によって、本書の概略と基本的な導入、そして18の章について学びを深めることができるのも、その特色の1つとなっている。資料集のほうも、著者自身が解説している6つの動画が紹介されている。
さらに、Wileyから出ている著者による関連文献などの資料はこちらのサイトで知ることができる。
なお、日本では2002年に教文館から第3版の日本語訳が『キリスト教神学入門』として、また07年にキリスト新聞社から同じく第3版に準拠した『キリスト教神学資料集』の日本語訳の上巻、13年に下巻がそれぞれ出版されている。著者は03年と08年に来日講演を行った。
『Christian Theology: An Introduction(キリスト教神学入門)』
『Christian Theology Reader(キリスト教神学資料集)』