大学から研究費約2180万円をだまし取ったとして詐欺罪で訴えられていた、東京大学政策ビジョン研究センター元教授の秋山昌範被告(58)の1審判決が28日、東京地裁であった。東京地裁は、懲役5年の求刑に対し、「研究者に対する信頼を逆手に取った巧妙な犯行で刑事責任は重い」とし、懲役3年の実刑判決を言い渡した。毎日新聞などが伝えた。
同紙や日本経済新聞によると、秋山被告は2010年3月〜11年9月、自身が関わる研究の業務をIT関連企業6社が受注したように装い、東京大から約1890万円、共同研究をしていた岡山大から約290万円を詐取した。
秋山被告は、知人が経営するIT関連企業が受注したように装った上で、その後、自身が実質的に経営する会社に再委託することで、研究費の大半を得ていたという。NHKによると、秋山被告は研究費の約9割を、実質的に経営する会社を通して得ていた。
東京地裁の稗田雅洋裁判長は、「東京大学教授としての地位を利用し、研究者への信頼を逆手に取った巧妙で悪質な犯行だ。だまし取った研究費を私的に使っているほか反省の態度も見られず刑事責任は重い」と指摘した。
日本経済新聞によると、秋山被告の弁護側は「詐欺の故意が認められない」とし、無罪を主張。しかし、架空発注先の企業の関係者の証言から、判決では、秋山被告が発注先の企業が実際に業務を行っていないことを明確に認識していたとし、退けた。
秋山被告は13年7月、東京地検特捜部に逮捕され、15年3月、東京大から懲戒解雇処分されている。NHKによると、秋山被告の弁護士は、判決が不服だとして控訴する意向を示している。
秋山被告は1983年、徳島大医学部卒業。徳島市民病院、公立大川総合病院(現・さぬき市民病院)、高松赤十字病院、国立療養所多磨全生園、国立病院四国がんセンター、国立国際医療センター病院などを経て、2005年に米マサチューセッツ工科大スローン経営大学院客員教授、09年に東京大政策ビジョン研究センター教授に就任していた。
東京大政策ビジョン研究センターは、同大総長室直轄の研究成果に基づいた政策提言を行う組織。「東京大学アクションプラン2005−2008」に基づき、08年7月に立ち上げられた。