正教会聖大会議(※1)が19日、ギリシャのクレタ島にある聖ミナス大聖堂で、各独立正教会の首座主教らによる聖神降臨祭のための奉神礼をもって始まり、20日には同島のクレタ正教アカデミーで開会会合が行われた。コンスタンディヌーポリ全地総主教庁によると、開催期間は26日まで。
聖神降臨祭の奉神礼では、正教会聖大会議の議長を務めているコンスタンディヌーポリ全地総主教バルソロメオス1世が説教を行った。「今日、ここクレタで私たちの聖なる正教会の全体性が表されています」とバルソロメオス1世は述べ、「したがって、私たちは声と心を一つにして、慈しみと憐(あわ)れみの主、そして一つ一つのとりなしを祝福するのです。なぜなら、主が『私たちの存在や私たちの息、私たちの理解、神・聖神と、始まりのない御父、そしてその独り子についての私たちの知識の源である』からです」と語った。
そして、「全ての良き物に、また今日共にしている祝祭に、そして私たちの正教会聖大会議において、またそれを通じて、全世界に対する私たち正教会の証しに完成をもたらすこの全く聖なる神に、私たちは御父と御子と共に、責任感から賛美を、今、そしてとこしえに、そして代々にささげます。アミン」と話して説教を結んだ。
同会議はこれまで、英語では、Pan-Orthodox Council(全正教会会議)とも呼ばれてきたが、4つの正教会が参加を取りやめた。そのうちで最も大きいロシア正教会では、最高指導者であるモスクワ総主教キリルが17日、クレタに集まった各正教会の首座主教や代表者らに向けてメッセージを発表し、正教会の一致を強調しつつ、この会議の延期を主張した(記事下に本紙による日本語訳あり)。
ブルガリア正教会のガブリエル府主教は16日、「独自に、かつ良心によって」、同会議への不参加を決めたと公式サイトで表明していた。
なお、この会議にはローマ・カトリック教会のクルト・コッホ枢機卿、世界教会協議会(WCC)のオラフ・フィクセ・トヴェイト総幹事とオダイル・マテウス・ペドロソ信仰職制局長などもオブザーバーとして出席している。
以下は、クレタ島に集まった各独立正教会の首座主教および代表者らに宛てた、ロシア正教会モスクワ総主教キリルのメッセージ(英語版)の本紙による日本語訳。
コンスタンディヌーポリ大主教―新ローマ・全地総主教
バルソロメオス聖下へ
神の聖なる諸教会の首座主教座下へ
クレタ島に集まった大司牧者様、司牧者様、修道士様、および信徒の皆様へバルソロメオス総主教聖下
各聖下および座下
仲間の大司牧者様
各正教会の名誉ある代表者の皆様私はロシア正教会を代表して、またモスクワ総主教庁の膨大な数の群れをなしている、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、モルドバやその他の国々の正教徒を代表して、皆様方に心からごあいさつ申し上げます。
兄弟の皆様、私たちはみなハリストスの一つの体であります(コリンフ前書第12章27節)。私たちは、主であり、私たちの救い主であるイイスス・ハリストスご自身から、一致というきわめて貴重な賜物を受けています。この賜物を保つことは、私たちの主要な務めの一つです。それは私たちの救い主が直接命じられたことであります(イオアン福音第17章21節)。
正教会聖大会議の開催について、姉妹教会の意見が分かれてきているという事実によって混乱しないようにしましょう。聖パワェルによれば、 「爾(なんじ)等の中には、異説も無き能(あた)はず、練達者が爾等の中に顕(あら)われん為なり」(コリンフ前諸第11章19節)とのことです。この会議の準備の日々の中で、そのような違いが十分明らかにされましたが、しかしそれによって私たちは、神が命じられた一致を弱めたり、それが教会同士の対立へと発展したり、私たちの地位に分断や困難を持ち込んではならないのです。私たちは一つの正教という群れに留まり、そして私たちは聖なる正教の運命についてみな責任を負うのです。
私は、クレタへ行くと決めた正教会も、そしてそれを控えることにした正教会も、両方ともきちんとした良識のうちにそれらの決定をしたものと、深く確信していますし、そしてこの理由故に私たちはそれぞれの立場を尊重しなくてはならないのです。
ロシア正教会は常に、どの国の正教会の声も、大きいところであれ小さいところであれ、古いところであれ新しいところであれ、無視すべきではないという確信から進んでまいりました。この会議を開催することに対するアンティオキア総主教庁による同意の欠如は、私たちが全正教会としての全会一致に達していないということを意味しています。私たちは、より後の日に延期をするよう発言したジョージアやセルビア、そしてブルガリアの正教会の声を無視してもいけないのです。
もし良心があるのならば、クレタにおけるこの会議は、現在の違いを克服することに向けた、重要な一歩となり得るものと、私は信じます。それは、各国の全ての独立正教会を例外なく一致させハリストス正教会の一致を目に見える形で反映する、その正教会聖大会議の準備に独自の貢献をすることができるのです。そのために、至福のうちに永眠した私たちの先達は祈り、そして期待をしたのです。
皆様方の目前にあるお働きの日々において、私たちの祈りがあなたがたとともにありますことを、ご安心ください。
ハリストスの大いなる愛をもって
モスクワおよび全ロシア総主教キリルより
※1 本紙ではこれまで、「全世界正教会会議」と表記してきましたが、一部の正教会が不参加となったこと、また会議の正式名称が英語では Holy and Great Council であるため、「正教会聖大会議」と改めます。なお、全地総主教庁の公式サイトに掲載された、正教の学者千人が会議開催を要求して出した公開書簡(6月12日付)の日本語訳では、「全正教会議『聖にして大なる公会』」とされています。一方、日本正教会の司祭によると、Holy and Great Council または Pan-Orthodox Council に対する日本語の定訳はありません。
※2 写真は、正教会聖大会議プレスオフィスの許諾を得て使用しています。