NPO神戸平和研究所が主催する講演会「『古代ユダヤ人は日本に来ていた』―実証的証明―」が3月25日、東京都新宿区の京王プラザホテルで行われた。イスラエル国立大学、アリエール大学のアビグドール・シャハン博士、元駐日イスラエル大使のエリ・コーヘン氏、神戸平和研究所理事長の杣浩二氏が講演した。
初めに、エリ・コーヘン氏が登壇。高野山の幹部から「あなたがたユダヤ民族が、アブラハムから4千年間続いてきた根拠は、どこにありますか?」と聞かれたエピソードを披露した。その際、コーヘン氏は「全世界の人口の1パーセントにも満たないユダヤ人が、ノーベル賞の25~30パーセントを獲得するのは、なぜだと思いますか?」「1週間は、なぜ7日間ですか」とユダヤ流に、問いに対して問いで返したという。
また、コーヘン氏は「日本民族とユダヤ民族が根っこでつながっている」と話した。その例として、諏訪大社・上社の御神体の山である守屋山の儀式と、アブラハムとイサクの奉献ストーリーの類似性を挙げた。
ユダヤ教徒であるコーヘン氏にとって、日本の八百万の神概念とユダヤの神概念の間に、何かとても共通したものを感じるという。コーヘン氏によれば、神道でいう「八百万の神々」というのは、全ての場所に神が臨在、偏在していることの象徴であるという。「日本の神社に鏡がある。神は人間を神の似姿に創られた。人が鏡を見るとき、神を見ている」という。
2番目に登壇したアビグドール・シャハン氏は、「ユダヤ教は、他の宗教と違う。自分に不利になっても、ただ正義(ツェデク)を追求するのがユダヤの民だ」と話した。「私たちユダヤ人は、聖書の民と呼ばれている。聖書の注解であるミシュナ、タルムードといった聖書の注解書で細かい規定をしてきたのは、ユダヤ教が正義を追い求めてきたからだ」と説明した。
また、シャハン氏は、カバラーと呼ばれるユダヤ神秘主義の考えも紹介した。聖書テキストの中に、隠されている秘密を読み解く解釈の例として、創世記でアブラハムが契約の動物を真っ二つに切り裂いたとき、たいまつが切り裂かれた動物の間を通り過ぎた箇所に、1995年のイツハク・ラビン首相暗殺の出来事が暗示されている、という自説を展開した。
「3500年前に未来を預言した例は、他にありません。なぜ、ノーベル賞にユダヤ人が多いのか。それは、聖書という本によって、私たちユダヤ人が偉大な民族にされたからです」と説明した。
イスラエルの失われた10部族の足跡を追って50年以上研究を続けているシャハン氏は、「ユダの地、レビ族から失われた10部族を求めて旅をし、ここ日本にたどり着いた。メノラーが発見された場所では、別のユダヤ文化の跡も発見されている。この日本でも、メノラーが発見されていることは、驚くべきことだ」と発言した。そして「失われた10部族の日本人が、イスラエルに戻ることを願う」と結んだ。
最後に登壇した杣浩二氏は、阪神・淡路大震災の時に、列に並んで秩序を保っている日本人の倫理の高さに外国人が驚いたエピソードと、日本人のルーツ研究の関係について問うた。
杣氏は「わたしの民エジプト、わたしの手でつくったアッシリヤ、わたしのものである民イスラエルに祝福があるように」(イザヤ19:25)の言葉がきっかけで古代文明の調査研究を始めたという。
「仏教は偶像礼拝者で、神道は悪霊信仰だと思っていました。しかし、NPO神戸平和研究所の活動で、宗教も立場も違うさまざまな方とお会いし、自分の考えの間違いに気付きました」と語った。
杣氏は、中国の仏教寺・白馬寺の建物に見られるメノラー、ハヌキアの写真を提示し、中国におけるキリスト教の痕跡について調査報告を行った。