長崎県および一般社団法人長崎県観光連盟が主催するパネル展、「“ひかりと祈り 光福の街 長崎”への誘い」が、聖イグナチオ教会ヨセフホール(東京都千代田区麹町6)で13日から開催されている。同展では、「信仰と共にある美しい暮らし」をテーマに作品を撮り続けている兵庫県出身の写真家・松田典子氏が撮影した写真パネル約40点を展示。7月にユネスコ世界文化遺産に登録される見通しの「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の風景や、そこに暮らす人たちの姿を見ることができる。
松田氏が撮影した写真は、地元関係者との深い信頼関係をはぐくみながら撮影されたもので、どの写真を見ても温かみと優しさにあふれている。また松田氏は、2005年から長崎新聞に月一度のペースで「五島列島・写真巡礼」というコーナーを持っており、その最終回では、「信者たちの祈りの心は教会と共にある。それは日常の生活や何気ない会話、食事、畑作業をするおばあちゃんの笑顔から思い出すことができる」と、五島列島の美しい暮らしを言葉でも表している。この「五島列島・写真巡礼」の記事は、今回のパネル展でも紹介されている。
パネル展は、ユネスコ世界文化遺産に登録されることを見据えた長崎県が、同県の魅力を写真を通してより多くの人たちにピーアールし、長崎を訪れる機会にしてもらおうと企画したもので、17日には同パネル展と同じタイトルで、松田氏も登壇する講演会も開催されることになっている。長崎県では、これまでも世界文化遺産登録に関するイベントを度々行ってきたが、教会を使ってのイベントは初めてだ。聖イグナチオ教会で行うことについて長崎県東京事務所の村中励さんは、松田氏の写真のイメージに合わせたことを説明した。
また、「“ひかりと祈り 光福の街 長崎”への誘い」というタイトルは、1昨年前から長崎県がキャッチフレーズとして使っているもので、「『ひかり』には、長崎の夜景やイルミネーション、『祈り』には平和の祈りなど被爆地長崎の思いも込められている」と述べ、長崎では「祈り」ということが、キリスト教信者だけでなく未信者の生活の中でも息づいていることを語った。
同事務所の神﨑修さんは、「長崎で暮らす人にとっては、教会があることは日常生活の一部で当たり前のこと」だと話した。そういう意味では、今回世界文化遺産に本登録される「長崎教会群とキリスト教関連資産」も長崎県全ての人にとって喜びであり、それは建築物だけでなく、長崎のキリスト教の歴史も含めてのものだという。
世界文化遺産に本登録される「長崎教会群とキリスト教関連資産」の本当の価値は、教会堂など建築物ではなく、その歴史だと神﨑さんは話す。「1549年にフランシスコ・ザビエルが長崎にキリスト教を伝え、その後250年におよぶ弾圧を受けながらも信仰は消えることなく静かに守り続けたこと」そして、「開港後の『信徒発見』という信仰の復活といった一連の物語こそが世界文化遺産として値するもの」だと述べた。
村中さんは「キリスト教の歴史が、250年という長い歳月の弾圧の中でも途絶えず、生き続けたことは、長崎県が自慢できることで、誰もが誇りに思うことです」と語り、「こういった歴史を多くの人に知ってもらい、長崎に訪れ、ひたむきな信仰心が生んだ、長崎とキリスト教の壮大な物語を実感していただきたい」と話した。神﨑さんも「長崎に多くの物語があることを知っていただければ、1度だけではなく何度も訪れてもらえることになると思う」と長崎が持つ魅力を強調した。
パネル展は20日(水)まで、時間は午前9時から午後7時。講演会は17日(日)午後1時から午後3時。入場は両方とも無料。講演会のみ定員200人。講演会参加者には、長崎県全ての教会が掲載されている「ながさき巡礼」のパンフレット、長崎のキリシタン銘菓「クルス」が配られる。問い合わせは、一般社団法人長崎県観光連盟情報推進部(電話:095・826・9407)まで