教科書や参考書などを発行する数研出版(東京)が、部外者への公開が禁止されている検定中の教科書を、中学校の校長ら複数の教員に見せ、謝礼として図書カード3000〜5000円分を渡していたことが分かった。こうした行為は、三省堂(東京)に続いて2社目。毎日新聞が伝えた。
同紙によると、数研出版は2014年度中、ホテルなどで各地の中学校長や教員に、2016年度から使用される当時検定中の中学校の数学の教科書を見せ、少なくとも1人に対し図書カードを渡していたという。10年度の検定でも同様の行為があり、NHKによると、教科書を選ぶ権限のある自治体の教育長らに対し、歳暮や中元を送っていたケースがあったも判明した。
読売新聞によると、こうした検定中の教科書を教員らに見せる行為は、数研出版社内で組織的に行われていた可能性があるという。同紙が入手した数研出版の内部資料には、「(検定中の教科書の)開示に当たっては、絶対に口外しないことを必ず伝える」「別室、放課後、学校外など、他の先生の目が届かないところで実施する」などが留意点として書かれており、同紙は「(数研出版が)ルール違反を認識したうえで、組織的に営業攻勢をかけていた実態が浮かんだ」と伝えている。
毎日新聞によると、数研出版は、高校の「数学1」では約6割のシェアを占めているが、中学校の数学の教科書のシェアは5・5%にとどまている。
馳浩文科相はこの日開いた記者会見で、「一部報道で明らかになったこと(数研出版の事案)は大変残念に思いますし、各教科書会社には、文科省とも連携を取りながら、営業活動の在り方については一定のルールがあったほうがいいと思います。私は、全てがだめだと言うつもりはもちろんありませんが、やはり教科書採択に関わる以上は、採択前の教科書を見せびらかすというか、そして金品のやり取りがあって、それを採択に結び付けようと思われるような行為は、これは厳に慎むべきだと思います」とコメントした。
また、「同時に、各民間会社でありますから、営業努力というものはそれぞれなされるものだと思いますが、やはり抜け駆けはだめですし、ずるもだめですし、一定のルールがあってしかるべきだと思いますから、ここは各教科書会社の団体と、また文科省と調節していただきたいと思っています」と語った。
検定中の教科書は、文科省の「教科用図書検定規則実施細則」で部外者の閲覧が禁止されているほか、教科書の出版業界内でも自主規制が敷かれているという。
NHKによると、数研出版は4日、こうした事実があったことを文科省に報告。文科省は口頭で指導した上で、詳細な調査を行うよう求めた。数研出版は「信頼を損なう行為があったことを深く反省し、再発防止策を検討中です」(NHK)とコメントしている。
検定中の教科書をめぐっては、三省堂が昨年、校長ら53人に見せ、謝礼を支払っていたことが明らかになっている。文科省は各教科書会社に対し同様の行為がなかったかを調査し、20日までに報告するよう求めている。