科学技術振興機構(JST、浜口道成理事長)は25日、大阪大学大学院情報科学研究科の50代教授が研究費計1億5000万円以上を不正な方法で経理処理していた疑いがあることが判明した問題で、調査の結果、JSTの取引先企業3社で合計9316万4955円の不正使用があったことを確認したと発表した。一方、私的流用は確認されなかったという。また、不正に関わっていたのは、同研究科教授で元JSTプロジェクトグループリーダーの四方(よも)哲也氏と発表した。
調査は、2004年度以降の研究機器など全2854件について行われ、取引先企業176社や大学から提出された書類とJSTが保有する書類を照合して行われた。また、不正な調達に関与した全16人と取引先企業3社に対して聞き取り調査も行ったという。
不正が確認されたのは、「預け金」と「品名替」という方法。「預け金」は、契約した物品などが納入されていないにもかかわらず、納品されたものとして支払金を取引先企業に管理させることで、「品名替」とは、取引先企業に取引実態と異なる品名や数量に書き換えさせること。
発表によると、四方教授の指示に基づき、JSTの元プロジェクトスタッフと事務担当のプロジェクトスタッフが預け金と品名替の実務処理を行っていた。四方教授は、元プロジェクトスタッフらへの指示を認めていないが、証言と資料から四方教授が預け金や品名替の指示を行っていたと判断したという。
不正が行われたのは、研究者の要求に基づき、JSTのスタッフ自らが経理処理し研究費を執行する「戦略的創造研究推進事業の直執行」の研究費。現在は制度の改正に伴い廃止され、研究機関での執行(委託研究)に移行しているという。
今回の不正を受け、JSTの浜口理事長は、「このような事態が起こったことは誠に遺憾であり、国民の皆様ならびに関係機関に深くお詫び申し上げます。今後、JSTにおいてこのような事態が二度と起きないよう、大学その他研究機関などと連携し再発防止に全力を挙げて取り組み、研究者やJST役職員の倫理観の再徹底、保持に万全を期すとともに、信頼回復に努める所存です」などとするコメントを発表した。
大阪大学のホームページによると、四方教授は同研究科バイオ情報工学専攻。生命機能研究科教授と兼任している。