米財務省の海外資産管理室(OFAC)は9日、指定暴力団「山口組」系だった旧「後藤組」(静岡県)の後藤忠政元組長(73、本名・後藤忠正)=カンボジア国籍取得、同国在住=を、資金洗浄(マネーロンダリング)などにより日本のヤクザの世界的な犯罪活動の手助けをしているとし、金融制裁の対象に指定した。これにより、米国内または米国人の管理下にある、後藤元組長の全ての資産は凍結され、米国人との取引が禁じられる。
OFACのジョン・スミス代行室長は「後藤忠政はヤクザと深くつながっており、ヤクザの世界的な犯罪活動の手助けをしてきた」と指摘。「今回の制裁は、後藤による米国内の金融システムへのアクセスを拒否するもので、国際的な犯罪組織との積極的な闘いへ対するわれわれの意志を示すものだ」と語った。
OFACは、旧後藤組が山口組内で大きな役割を果たし、ダミー会社のネットワークづくりをしてきたと指摘。後藤元組長は2008年に山口組を除籍され引退し、カンボジアに移住するが、その後もヤクザ関係の会社とつながりを持ち、自身の合法・非合法な事業のために利用してきたとしている。
また、日本とカンボジア間の資金洗浄をするなどし、山口組や旧後藤組の関係者らの支援をその後も続けてているとしている。さらに、指定暴力団「浪川睦(なみかわむつみ)会」(旧・九州誠道会)ともつながりをつくっている報告があるとしている。
OFACは、日本のヤクザは、アジアや欧州、南北米の犯罪組織とも関係があるとし、特に米国においては、薬物の密輸や資金洗浄などに関わっているとしている。今回の金融制裁を含めると、OFACは日本のヤクザと関わりのある個人14人、暴力団5団体について金融制裁の対象に指定している。
OFACは、後藤元組長を特定する情報として、後藤元組長の法名「忠叡(ちゅうえい)」や、カンボジアで得た称号「アジャ」を付けた「アジャ忠叡」などの呼称も公表している。