特定秘密保護法について、2013年10月の閣議決定前、会計検査院が内閣官房に「憲法の規定上、問題」と指摘し、条文の修正を求めていたことが分かった。内閣官房は修正には応じず、代わりに従来通り会計検査に応じるよう各省庁に通達すると約束したが、特定秘密保護法が同年12月に成立して以来、2年たっても通達が出されていないという。毎日新聞が8日、情報公開請求で内閣官房や会計検査院から入手した文書で判明したと伝えた。
特定秘密保護法の10条では、「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたとき」に限り、特定秘密を提供するとしている。しかし、同紙によると、特定秘密に指定した行政機関が日本の安全保障に著しい支障を及ぼす恐れがあると判断した場合は、国会などから求められても特定秘密の提示を拒むことができるという。
一方、会計検査院について規定する憲法90条は、「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない」と定めている。
そのため会計検査院は、検査対象の文書に特定機密が含まれ、「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれ」があるとされた場合、検査対象の文書を受け取れない事態が起こる可能性があり、憲法上問題だとし、条文の修正を求めたという。しかし内閣官房は、会計検査院と行政機関で調節すれば、特定機密に指定された文書も受け取り可能だとし、修正には応じなかったという。
最終的には、条文の修正はしないが、「秘密事項について検査上の必要があるとして提供を求められた場合、提供する取り扱いに変更を加えない」とする文書を、内閣官房が各省庁に通達することで合意。その約2週間後に閣議決定されたという。
一方、これまでのところ、会計検査の対象に特定秘密の文書が含まれたことはないという。内閣官房は、憲法上の問題があるとは認識していないとし、通達は「適切な時期」に出すとしている。
同紙は、大日本帝国憲法下に軍事関係予算が会計検査の対象外となりブラックボックス化した反省から、憲法90条の規定があるとし、自衛隊法が定める防衛秘密についても、会計検査院への提供を制限する規定はなかったと説明している。