米国のある教会が、結婚と按手(あんしゅ)を含む全ての教会生活に同性愛者の参入を認める決定を撤回しなければ、所属するバプテスト連盟から除名されるという危機に直面している。
米サウスカロライナ州グリーンビルにあるバプテスト派の教会「ファースト・バプテスト・グリーンビル」は5月、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)の人々に対し、教会に所属する権利、結婚する権利、按手を受ける権利において差別しないことを投票で決定した。
同教会は、「メンバーシップ、洗礼、按手、結婚、教職、委員会、組織運営を含む私たちの教会における全ての生活と働きにおいて、ファースト・バプテスト・グリーンビルは性的指向や性自認に基づき差別をすることはありません」と宣言した。
同教会は1999年に、保守的な南部バプテスト連盟(SBC)を脱退しているが、サウスカロライナ州バプテスト連盟(SCBC)には残留している。
また、協同バプテスト・フェローシップ(CBF)とも提携している。SBCは認めていない女性牧師を認めるなど、CBFはバプテスト派組織の中では比較的にリベラル寄りだが、結婚に関しては「キリスト教の性倫理の基礎は、一人の男性と一人の女性の間の結婚への誠実さと、独身者の純潔です」と宣言している。
SBCのロニー・フロイド議長はSCBCの機関紙に、「ファースト・バプテスト・グリーンビルの決定を聞いたとき、私の心は悲しみました」と語った。
SCBCのトミー・ケリー議長は、「南部バプテストは地域教会の自律性と万人祭司性のような原則を取り入れてはいるものの、この(同性愛や結婚に対する)原則は聖書の権威を決して超えるべきではありません」と語った。
ケリー議長は、マタイによる福音書19章4〜5節「イエスはお答えになった。『あなたたちは読んだことがないのか。創造主は初めから人を男と女とにお造りになった。そして、こうも言われた。『それゆえ、人は父母を離れてその妻と結ばれ、二人は一体となる・・・』」を挙げ、「結婚は一人の男性と一人の女性の間の契約関係」と語った。また、同性愛者に按手をする決定は、「聖書の洗礼や基準に真っ向から反対するもの」と述べた。
一方、同教会のジム・ダント主任牧師はこの動きを擁護している。ダント牧師は、「私たちが21世紀に持ち込むべき家族の在り方のシステムは、聖書にはありません。私たちは2人の妻を持ったり、家政婦と寝たり、非常に多くの数の子どもを持ったりしませんし、それでうまくいっています。私たちが結婚や家族について信じていることは文化的なことから来るもので、聖書から来るものではないのです」と語った。
SCBCのドワイト・イースラー委員長は、同教会に対し、その決定を撤回するか自主的に連盟を脱退するかを9月10日までに選ぶよう求めている。もしどちらもしない場合は、連盟での投票により除名される可能性がある。
影響力のある保守派のキリスト教指導者の一人で、南部バプテスト神学校学長のアルバート・モーラー氏は、同教会の動きが「LGBT識別チーム」の指揮下での「識別」のプロセスを経た後に始まったと述べた。
モーラー氏は、180年以上の歴史ある同教会が米南部で最も歴史的な教会の一つであり、1845年のSBC創立当時の構成教会だったことに触れた。
同教会はファーマン大学(サウスカロライナ州)の創立に大きく関わっており、その古い「チャーチ・ハウス」は1859年、南部バプテスト神学校の初の本拠地となった。「南部にある教会で、この教会に匹敵する歴史的記録を持つところはほとんどありません」とモーラー氏は言う。
20世紀に入り、同教会はリベラルに傾く一方、SBCは告白を重んずるようになり、聖書の無誤謬性を堅持するようになった。
モーラー氏は、「教会や教派が一度聖書の無誤謬性から外れると、文化的圧力からの影響がとどまることなく入ってくることになります」と指摘。「全ての教会、全ての教派、全てのキリスト教系団体が持つ大きな課題がここにあります。一度聖書の無誤謬性を捨てると、神学的、道徳的修正論にはとどまるところがありません。聖書の権威は相対的になり、教会を聖書の言葉や2000年に及ぶキリスト教徒の証しにとどめておくものは何もなくなります」と語った。