キリスト教迫害監視団体米オープンドアーズはキリスト教を信じる人々への迫害のレベルを各国別にランク付けした2012年度版年間「ワールド・ウォッチ・リスト」を発表した。5日、米クリスチャンポスト(CP)が報じた。
米オープンドアーズCEOのカール・モエラー氏は米CPに対し、キリスト教徒への迫害レベルの深刻さにもかかわらず、迫害各国での福音の土壌は固く形成されていることを伝えた。
ウォッチリストは迫害各国のフィールドワーカー、迫害されている信徒、および現地の人々に宗教の自由に関する具体的な質問をしながら行った調査を基に作成されている。今年度の報告書ではイスラム教徒が大多数を占める各国においてキリスト教徒数が大きく増加していること、キリスト教の福音が予期しない場所で広まっていることが示された。
今年度のウォッチリストでは、北朝鮮が10年連続でキリスト教迫害国第一位にランクインされた。オープン・ドアーズによると、悪名高い北朝鮮強制収容所には5万人から7万人程のキリスト教徒が収容されていると推定されているという。北朝鮮強制収容所は劣悪な環境で有名であるが、キリスト教徒の収容者は他の収容者よりもさらに残酷な扱いを受けることで知られている。オープン・ドアーズは北朝鮮新指導者の金正恩氏は同国でキリスト教共同体を排除するための政策を引き継いでいくものと見ている。
その他キリスト教迫害国は第2位から11位までがイスラム教国が占めており、アフガニスタン、サウジアラビア、ソマリア、イラン、モルジブ、ウズベキスタン、イエメン、イラク、パキスタンとなっている。イラクとアフガニスタンは特に今年から駐在米軍が撤退することによる、国内でのキリスト教迫害状況が懸念されている。
モエラー氏は、「残念なことにイラクとアフガニスタンのキリスト教徒の状況はより深刻になると危惧されています。アフガニスタンとイラク復興に米軍が関わったことによる悲劇のひとつとして、イラクとアフガニスタンの解放のために駐在した米軍が撤退するにあたって、これまでに米国民の数十億ドルの血税が使われ、現地に派遣された多数の負傷した兵士や犠牲者を出してしまったことです」と述べた。
モエラー氏は、それにもかかわらずアフガニスタンとイラクの宗教自由度は10年前よりも深刻な状況になっていることに遺憾の意を表し、「イラクとアフガニスタンのキリスト教徒を取り巻く状況は米軍撤退後の短期間で著しく悪化してしまうことを懸念しています」と述べた。
ナイジェリアとスーダンでも昨年キリスト教に対する迫害が著しく悪化した。ナイジェリアは前年度の23位から13位に、スーダンは35位から16位にそれぞれ浮上している。
モエラー氏には、これらの国々ではキリスト教教会への規制が強化されており、ナイジェリアはキリスト教徒がもっとも暴力を受けやすい国の一国であると指摘し、「北アフリカとサハラ以南のアフリカを二分するナイジェリアを横切る地域がキリスト教徒に対するイスラム教徒の暴力が勃発するボーダーラインになっています」と述べた。ナイジェリアは、昨年一年間で300人もの殉教者が生じた。スーダンでは誘拐や教会の運営資金の縮小化によってキリスト教徒の活動が妨げられている。
エジプトも昨年2月にムバラク大統領が追放されて以来キリスト教徒への迫害が深刻化している。「アラブの春」を迎えている中東各国の中でも最もキリスト教徒への迫害が懸念されている。イスラム教の政党がエジプト議会議席の大半を占めることで、エジプト国内でのキリスト教徒を取り巻く環境がさらに悪化することが懸念されている。
モエラー氏によると、中東域のキリスト教共同体にとっての最大の脅威は、シャリア法を国内の政治に適用し、キリスト教徒を撲滅することがコーランの教えであると解釈するイスラム教急進派の動きであるという。モエラー氏は「これらの国々の政府はイスラム教急進派勢力とより一層肩を並べるようになっています。そのためより多くの中東各国政府がキリスト教共同体への迫害や規制を強めるようになっています」と述べている。
一方中国や北朝鮮、イスラム教諸国などキリスト教が最も迫害されている国々の全てにおいて、教会の成長と福音伝道の拡大が見られるというパラドックスが生じているという。これらのキリスト教迫害諸国に存在する既存の教会ではとてつもない暴力に苦しんでいるものの、地下教会の活動はそれぞれの国々で高まっており、これらの国々の地下教会に所属するキリスト教徒らは、身の危険を感じながらも信仰を保ち続けているという。
モエラー氏は「キリスト教共同体の第四の流れとして中東諸国の地下教会の活動が挙げられます。中東諸国で霊性を成長させることのできない空洞の中に置かれた男女が、イエス・キリストの信仰に改宗し、死に直面する危険があるにもかかわらず、信仰を保ち続けています。このような信仰を保ち続ける活動が持続されているのは、聖霊の働きが生じているとしか言いようがありません」と述べている。
クリスチャントゥデイからのお願い
皆様のおかげで、クリスチャントゥデイは月間30~40万ページビュー(閲覧数)と、日本で最も多くの方に読まれるキリスト教オンラインメディアとして成長することができました。この日々の活動を支え、より充実した報道を実現するため、月額1000円からのサポーターを募集しています。お申し込みいただいた方には、もれなく全員に聖句をあしらったオリジナルエコバッグをプレゼントします。お支払いはクレジット決済で可能です。クレジットカード以外のお支払い方法、サポーターについての詳細はこちらをご覧ください。
人気記事ランキング
-
ミャンマーのカトリック教会、大聖堂指定から2週間たたずに空爆直撃 使用不可能に
-
神学者トマス・アクィナスの顔、法医学の手法で復元 死因にも新説
-
「今、私はクリスチャンです」 ウィキペディア共同創設者がキリスト教に回心
-
聖地があるなら行ってみたい(その1) ルカ福音書19章45節~20章27節
-
サンタ・クロースと呼ばれた人―聖ニコラスの生涯(13)浜辺のテント小屋
-
若者の77%がイエスについて知りたいと思っている 米世論調査
-
山梨英和大学、パワハラで学長ら2人を「降任」の懲戒処分
-
聖書のイエス(3)「わたしは彼らに永遠のいのちを与えます」 さとうまさこ
-
シリア語の世界(17)代名詞 川口一彦
-
喜びをもって主に叫び祈ろう 万代栄嗣
-
「今、私はクリスチャンです」 ウィキペディア共同創設者がキリスト教に回心
-
神学者トマス・アクィナスの顔、法医学の手法で復元 死因にも新説
-
若者の77%がイエスについて知りたいと思っている 米世論調査
-
山梨英和大学、パワハラで学長ら2人を「降任」の懲戒処分
-
国内最高齢の女性映画監督、山田火砂子さん死去 日本人キリスト者の半生描いた作品多数
-
トランプ米大統領、「反キリスト教的偏見」根絶を目指すタスクフォースなど創設
-
保育の再発見(27)この30年をどう過ごしてきたか
-
ミャンマーのカトリック教会、大聖堂指定から2週間たたずに空爆直撃 使用不可能に
-
喜びをもって主に叫び祈ろう 万代栄嗣
-
篠原元のミニコラム・聖書をもっと!深く!!(214)聖書と考える「週末旅の極意2」
-
「今、私はクリスチャンです」 ウィキペディア共同創設者がキリスト教に回心
-
「こんな悲惨なミャンマーを見たことはない」 政変から4年、ヤンゴン大司教が来日会見
-
国内最高齢の女性映画監督、山田火砂子さん死去 日本人キリスト者の半生描いた作品多数
-
トランプ米大統領、「反キリスト教的偏見」根絶を目指すタスクフォースなど創設
-
後藤健二さん没後10年、追悼イベントで長女が映像メッセージ 「誇りに思っている」
-
「苦しみ」と「苦しみ」の解決(1)「苦しみ」の原因 三谷和司
-
説教でトランプ米大統領に不法移民らへの「慈悲」求めた聖公会主教、説教の意図語る
-
山梨英和大学、パワハラで学長ら2人を「降任」の懲戒処分
-
トランプ米大統領の就任式で大衆伝道者のグラハム氏らが祈り、神の導きと守り求める
-
「新たなケア」と「限界意識のスピリチュアリティー」 宗教学者の島薗進氏が講演