国際連合(UN)は、1945年に設立された政府間組織で、国際的な平和と安全保障の維持、経済的・社会的発展、人権の促進を目的としている。加盟国は193カ国に達し、総会、安保理、経済社会理事会など複数の機関で構成されている。
国際問題に対しては、各国の協力を強化し、平和的解決を図るために重要な役割を果たしており、国際社会における政治的影響力の中心地だ。ただしそんな国連だが、終末論的な視点に立つならば、その超国家的な在り方、また人権や平等の美名の下に、聖書的な価値観を破壊する側面を否定できず、手放しには評価できない。
そんな国連を、キリスト教徒が神の愛、憐(あわ)れみ、そして正義を証しできる、他にない宣教の場と捉えている信者がいる。それがメノナイト中央委員会(MCC)の国連代表を務めるクリス・ライス氏だ。
「私はこれらの場で、キリスト者の存在が持つ力を目の当たりにしてきました」とライス氏は語る。「国連には8千人以上の職員と5千人の外交官がおり、その多くは福音を聞いたことも、キリスト教の価値観に触れたこともないかもしれません。しかし、もしキリスト者がこの共同体を、神の愛と真理の影響力を受けるのに準備された未伝道の人々として捉えたらどうでしょうか。幾つかの福音派団体がここに常駐し、国際政策を形作る人々と関わり、永続的な変化をもたらす重要な機会を活用しています」
MCCは45カ国で活動しているが、多くの場合、政治的な権力がキリスト教団体の働きを妨げるような場所で活動しているという。ライス氏はこう続けた。
「例えば、2021年のミャンマーの軍事クーデターでは、私たちの現地パートナーの多くを命からがら逃亡させました。ハイチではギャングが政権を掌握し、私たちの保健・農業プログラムの実施をほぼ不可能にしています。シリアの戦争は国を荒廃させ、難民を散らし、教会のパートナーの生活を一変させました。これらの困難な環境において、現地のパートナーたちは、重要な情報や知識を有しており、その知識は国連と共有することで非常に有益になるのです。ミャンマーのクーデター後、私たちは国連機関と協力して、民間人に対する化学兵器を使用した攻撃を記録し、報告しました。そして、抑圧的な政権下で苦しむ人々の声を代弁して発信したのです」(続く)
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