家の教会を摘発され、18日間の厳しい勾留期間を経て有罪判決を受けたモシェンとシミンだったが、保釈されたシミンには勤務先の病院から早速解雇の電話が来た(※安全のため、人物の本名は変えてある)。イランで改宗者のレッテルが貼られた者には、社会的に抹殺される運命が待っているのだ。(第1回から読む)
彼らは主イエスを礼拝したい、主に仕えたいという一心で、持病の2歳の娘を連れて国境を越える決意をしたのだった。長時間に及ぶ国境越えはともすると命懸けの綱渡りだ。娘にとっては特に危険の伴う旅だったが、何と娘はその道中で癒やされた。そして一家は無事、近隣国へと脱出を果たしたのである。
想像を絶する迫害に耐えた後、シミンと彼女の家族は、新しい文化と言語で生活を築かなければならないという新たな課題に直面した。彼らはオープンドアーズの奉仕者とつながり、迫害の痛みを乗り越えるのを助けるプログラムや、弟子訓練のトレーニングに参加した。
このトレーニングでは、他の人々に仕えるための準備もする。シミンは1年間にわたってオンラインと対面のミーティングや集会の両方を含む、全コースに参加した。このトレーニングを通じて、夫婦はオンライン宣教を始めたのだ。その結果シミンは、イラン国内外35都市のペルシャ語を話す信者たちの女性に、オンライン環境で聖書を教えるようになった。
「私はたくさんのことを学び、再び信頼を見いだすことができました。今では、精神的にも霊的にも良くなり始めています。どこにも助けを見いだせなかったとき、大きな助けを得たのです」
神はモシェンとシミンの新しい家でも共にいてくださった。シミンは最近乳がんと診断されたのだが、主イエスが祈りを通して彼女を癒やしてくださったと分かち合ってくれた。主はまた、迫害を経験している他の女性たちを助け支援するようにと、シミンを励ましている。
「私はまだ完全に安全な場所にいるわけではありませんが、それらの女性たちの痛みを理解しています。私は彼女たちを慰め、彼女たちに仕えたいのです」とシミンは喜びをもって語った。彼らのオンライン宣教を通じて、シミンはイランの女性たちに聖書を教え、家の教会を導くための準備をしているのだ。
「イランのイスラム教と政権は女性のアイデンティティーを破壊し、ほとんど全ての女性が縛られています」と彼女は説明する。しかし、神はシミンを用いて、迫害された女性たちにリバイバルをもたらしているのだ。そして今、主イエスに従うために全てを懸けたこの改宗者は、イエスの力と希望の生きた証人となっているのである。
「私の人生の旅で、私は多くの迫害を経験しました。しかし、私はいつも神が働いておられるのをこの目で目撃してきました」
信仰の自由を当たり前に謳歌(おうか)できるということは、実は当たり前ではないということをまざまざと教えられる証しではないか。「主イエスを礼拝したい! 主に仕えたい!」と願う信者の衝動が、国や地域が違えば犯罪として扱われるのである。私たち平和を享受する国に住む信者は、迫害に苦しむ同胞兄姉たちのために祈る義務があるのではないだろうか。
迫害の北風が吹き荒れる中、イランは21世紀最大のリバイバル国の一つとして数えられている。その火は、国内外のペルシャ語話者コミュニティーの中で広がっているのだ。リバイバルの継続とイランの信仰の自由のために祈っていただきたい。
■ イランの宗教人口
イスラム 37・2%
キリスト教 1・5%
無宗教 22・2%
ユダヤ教 0・02%
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