ムスリムの女性また妻として、涙の絶えない日々を強いられていたサラだったが、職場のキリスト信者の友人リディアによって、聖書を読み、イエスを信じるように導かれていった(※登場する人物は、安全上の理由から仮名となる)。(第1回から読む)
サラは聖書を学び始めて1年後、神の御言葉に対する理解と、人生に関わってくださる神への理解がさらに深まった。そして、それは彼女の人生を一変してしまうような特別な体験へと発展したのだ。
ある夜、彼女は眠っているときに夢を見た。その夢の中で、神がサラの前に現れ、優しくこう語りかけたというのだ。
「恐れることはないサラ。私は道であり、真理であり、命である。私に従ってきなさい」
サラが目を覚ますと、その瞬間、彼女の人生はもはや今までと同じではないと感じた。その日、28歳の彼女は、心から主イエスを救い主として受け入れたのだ。
「イエスへの信仰は、私の心を喜びと平安、希望で満たしてくれました。イエスこそは、私が切実に必要としていた力を与えてくださったのです。ずっと以前に失っていた希望を、私はもう一度見つけることができました」
その瞬間から、サラの人生は新たな方向に動き出した。彼女は、イエスへの信仰の中に力と希望を見いだした。そして神との関係は、彼女の心を愛と平安で満たしたのである。
もちろん、それで苦難のない人生が約束されたというわけではなかった。「キリスト信者になったとき、拒否されたり、迫害を受けたりしましたが、夫にイエスへの信仰が知られたときは、本当に命の危険を感じました。私は離婚される恐れに直面したのです。私は賢く慎重でなければなりませんでした。子どもたちを失いたくなかったからです。さらに私の信仰が原因で、私は地域社会から拒絶されるばかりか、殺される可能性さえありました。私は偏見と過激主義が支配する地域に住んでおり、イスラム教からキリスト教に改宗するキリスト者は完全な拒絶と死の危険にさらされるのです」
ある日、サラが最も恐れていたその最悪の事態が起きた。彼女が家で聖書を手に祈っていると、ラシドが早く仕事を切り上げ、不意を突いて帰ってきたのだ。夫は妻の手にある聖書を見た瞬間、彼女がキリスト教に改宗したことを悟った。彼は激怒して、妻を容赦なく残酷に殴り続けた。もし彼女がイスラムに戻らないなら、離婚して子どもたちを取り上げ、今後永久に子どもたちには会わせないと脅してきたのだ。当時子どもたちは3歳と5歳だった。
ラシドは、妻の改宗という愚かな行為を皆に知らせるとわめき立てた。彼は彼女を殴り続けた。するとサラはある拍子に倒れて頭を打ち、意識を失ってしまった。子どもたちは恐怖のあまり叫びながら母親を見守っていた。幸い、近所の人々がすぐに介入し、彼女を病院に運んでくれた。彼女の頭の傷は深く、合計で17針も縫う怪我を負ったのだ。
ラシドの脅迫は、単なる脅しではなかった。「病院では体の痛みがひどかったのですが、私にとってもっと恐ろしかったのは、子どもたちを失うことでした。予想通り、夫は一方的に離婚届を突きつけ、子どもたちを連れて姿を消してしまったのです」
息子たちがどこにいるのか分からないまま、彼女は苦悩の中に取り残された。エジプトでは、風当たりが強く、行き場のないキリスト教徒に改宗した女性が一人で生きていくことは、生半可なことではない。サラは計り知れない恐怖の中にいた。今でも彼女は、その時の恐怖を忘れない。
「キリスト教徒を不信仰者と見なす人々への恐怖、子どもたちに二度と会えないのではないかという恐怖、そして私はただの弱い女だというだけではなく、人々から憎まれるイエスを信じる女であり、私のような者には居場所がないという未知への恐れがあったのです」
彼女のムスリムの隣人たちさえも、彼女を脅し始めた。というのも、夫によって改宗が暴露され、それによって脅迫を受け、サラは仕事を辞めざるを得なくなったのだ。彼女はより安全な場所に移るしかなかった。激しい心痛と恐怖の中で、彼女は祈り、イエスに問うた。
「主よ、私が今直面しているこの恐怖と悲劇以外に、あなたは私のために計画をお持ちではないのですか」
そして程なくして、彼女の祈りは天に届いたのである。(続く)
■ エジプトの宗教人口
イスラム 86・7%
コプト教会 11・6%
プロテスタント 0・9%
カトリック 0・4%
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