8歳で両親を亡くし、祖母のもと、厳格なイスラムの教えを受け、貧しい環境で育ったサラは、若くして暴力的なラシドと結婚した。彼女の結婚生活は夫の暴力に苦しめられ、2人の息子と共に精神的、肉体的な虐待を受けていた。そんなある日、職場の同僚のリディアが持つ不思議な幸福感や平安に引かれるようになった。そう、リディアはイエスの信者だったのだ(※登場する人物は、安全上の理由から仮名となる)。(第1回から読む)
サラは自分の人生が変わった日のことを、今でもはっきりと覚えている。ある日サラは、またしても涙を流しながら出勤した。彼女の心は夫の暴力によってズタズタにされていたのだ。すると、リディアが優しさと思いやりを示して近づいてきた。リディアはサラの痛みを和らげるために、心のこもった会話を交わした。
「私の心の痛みに気が付いてくれたのはたった一人、リディアだけでした」とサラは振り返る。「彼女は座って、真心から私の話に耳を傾けてくれました。そして私を励まし、優しい言葉をかけてくれたのです」。涙が頬を伝い流れる中、サラは自分の無力感や絶望感に打ちひしがれ、なぜ神はこれほど多くの苦しみを自分に与えるのかと問いかけた。
その悲嘆と苦痛の中で、サラはリディアが持っている絶え間ない平安と喜びの秘訣について、勇気を出して聞いてみた。「リディア、あなたの心に平安をもたらしているものはいったい何? あなたの信仰のせい?」とサラは尋ねた。するとリディアは、救いのメッセージをサラに伝え始めた。リディアが伝えた福音の言葉は、サラの心を深く打った。リディアはサラに聖書を渡し、読み方を教えてくれたのだ。
サラは当初混乱し、怖がっていた。ずっと教えられてきたイスラム教の厳格な信仰と、リディアが分かち合ったイエスの慈愛に満ちた言葉とのギャップを理解できないでいたのだ。しかし彼女は、キリスト教信仰についてもっと深く知りたいと強く願うようになった。サラは聖書を読み続け、聖書とコーランの違いをメモに取った。すると日に日に彼女の心は、聖書の中にある教えやメッセージが本物であると確信するようになった。彼女は聖句の中に慰めと知恵を見いだしたのである。
「聖書は私にとって人生を同伴する伴侶のようなものとなり、私は毎日聖書を読みました」とサラは言う。「それは私の心を養い、安らぎを与え、人生の全てにわたって平和をもたらしてくれました。福音と出会って最初の年、私は自分の中におられるとは知らなかった別の方、つまり内住のキリストに似た者へと変えられ始めたのです。福音の教えは、私が永遠に失ったと思っていた本当の私を生き返らせてくれたのです」(続く)
■ エジプトの宗教人口
イスラム 86・7%
コプト教会 11・6%
プロテスタント 0・9%
カトリック 0・4%
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