5月17日のワールドミッションレポートで、ローザンヌ運動の報告書「大宣教命令の現状」から伝えた。目下の主要な世界宣教の傾向は、多極化しているということだ。
もともと西洋諸国が中心のキリスト教宣教は、地理的な位置に関係なく「全ての人から全ての人へ」の宣教参加を強調し、世界中に複数の極を含むように発展してきた。この考え方は、聖書的なキリスト教史に根付いている。初期の宣教の中心はエルサレムだったが、その後アンテオケが異邦人伝道の基地となった。そして現代では、欧米諸国からアジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの地域に拡大し多極化している。
この転換は宣教の方法論にも表れている。つまり世界宣教においては、現地の協力が不可欠となっており、宣教の多極化においては、現地の指導者が重要な役割を果たしており、あらゆる民族グループに教会が設立されることを目標としている。このことは、植民地時代の遺産からの脱却と現地のニーズへの適応、そして宣教の教育改革が必要であることを示唆している。現代の宣教の重要な側面は精神衛生であり、幸福度を高めるための宣教活動の必要性を強調しているのである。
多極化する宣教においては、多様な民族グループのニーズを理解し、それに応えるための研究が不可欠だ。また(シリアやウクライナのような)政治的社会的大変動に伴う移民・移住は、福音を広めるためのまたとない機会を提供する。この場合、宣教資金を調達するための全世界的なリソースの公平な分配は不可欠である。
また多極化する宣教は、従来の階層的なモデルから、より包括的で協力的なアプローチへと移行することを促す。このことは、ダイナミックでグローバルに統合されたビジョンへの飽くなき挑戦を教会に提示するのである。
19世紀は、プロテスタント宣教が世界的に拡大した。そして20世紀はその宣教的遺産を引き継いだ。21世紀の現在は、そこからさらにシフトして、宣教の多極化傾向が加速している。
復活の主イエスは言われた。「全世界に出て行き、すべての造られた者に、福音を宣べ伝えなさい」(マルコ16:15)と。時代時代に応じて手段は変化するが、時代を超越してその宣教目的は一貫している。すなわち、主イエスが命懸けで開いた救いの道であるこの福音は、全ての人々に提示されなければならない。移りゆく時代の中であらゆる方法を通して、決して変わることのない福音が全ての人々にあまねく届くように祈っていただきたい。
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