進化論の実態を明らかにし、創造論を論証する講演会「科学の本質と創造論」(インターナショナルVIPクラブ主催)の第3回が25日、オンラインで開かれ、約50人が参加した。前回に続き、電子物性工学が専門の阿部正紀・東京工業大学名誉教授が進化論の実態を分かりやすく解説しながら、創造論との違いについて論じた。
「細胞の起源」の謎
今回注目したのは「細胞の起源」。阿部氏は冒頭、「全ての現象を原子・分子の挙動で説明しようとする進化論では、細胞の起源を説明できない」と指摘した。
人の体は、約37兆個の細胞で構成されているが、その出発点は受精卵という一つの細胞だ。その細胞が分裂を繰り返し、神経細胞、筋肉細胞、骨細胞などおよそ250種類の分化細胞に分かれていく。
細胞は約10種類の細胞小器官を持ち、そのうち5種類の細胞小器官が協力してタンパク質を合成、加工し、さまざまな機能を持ったタンパク質を作り出す。これらのタンパク質を用いて、細胞が体を作る。さらに細胞は、タンパク質をメッセージ物質として用い、全身の臓器の細胞と情報交換して生命を維持していることが分かっている。
進化論を支持する学者たちは、このように高度な秩序構造がどのようなメカニズムで生成されると説明しているのか。阿部氏は「多くの進化学者が、細胞の起源を解放系で生じる自己組織化に求めています」と説明した。
解放系とは、エネルギーや物質が絶えず出入りしている移動の形態。自己組織化とは、外部から手を加えなくても、自律的に秩序が整い、形成される状態をいう。解放系では、生き物のように動く動的な秩序構造がひとりでに生まれることがある。例えば、浅い鍋で加熱したみそ汁で発生する対流パターンや、鳴門の渦潮などがそれに当たる。
自己組織化された秩序構造がまるで生き物のように動くのであれば、細胞の起源が説明できてもよさそうに見える。「ところが、それでは全く説明できない」と阿部氏。「細胞はDNAの遺伝情報で統括され、生きる目的を持ち、タンパク質を合成して体を作り、情報を他の細胞と交換して生命を支えています。統括するものがなく、目的を持たず、何も作らず、単純な時間変化をするだけの自己組織化構造では、細胞の起源を説明できないのです」と話した。
「形質の進化」は説明できない
また、もし仮に自己組織化によって細胞が誕生したとしても、「アメーバのような単細胞生物が複雑な生物に進化したと想定されているメカニズムを説明できない」と指摘した。
人のDNAには約2・2万個の遺伝子が散らばっている。この遺伝子部分を設計図としてさまざまなタンパク質が合成され、それらのタンパク質が生物の形質を作る(発現する)。人で見ると、目や髪の色、身長といった形態、また、血液型や、がんを発症したり抑制したりする傾向といった性質が、合成されたタンパク質によって発現する。
現在の進化論では、DNAが複製されるときに偶然起きるDNAの突然変異(ミスコピー)が進化の原動力とされている。DNAの突然変異によってタンパク質が変異し、変異したタンパク質によって生存に有利な形質を獲得した生物が自然選択され、進化が起きると想定されている。
しかし1980年代には、DNAの突然変異の大部分が、自然選択に対して有利でも不利でもない中立な変異であることが分かり、自然選択が働かない、つまり進化が起きないことが判明したという。
これに対し、国立遺伝学研究所の故木村資生教授は、自然選択の観点から良くも悪くもない中立突然変異がDNA分子に累積してきたことを説明する「分子進化の中立説」(中立進化説)を発表し、自然選択説の危機を救ったとされる。だが、「中立進化説はDNA分子の進化に関する理論であり、形質の進化については蚊帳の外で、全く説明できない」と阿部氏。「現在の進化論は、形質の進化、すなわち種の内部で起きる小進化、および種を超えた大進化のメカニズムを説明できない。これが現在の進化論の実態」と話した。
「DNAの突然変異の大部分が中立突然変異であるという事実について、創造論ではどのように考えているのか」との参加者からの質問には、「創造論では、DNAにミスコピーが生じても、創造主が与えたDNAの修復能力によって種が一定の枠内にとどまるように守られていると考えます」と回答。既に分子生物学によってDNAの突然変異は常に修復されていることが分かっているが、進化論ではその修復エラーが進化を引き起こすと考えることに触れながら「ミスとエラーと作業仮説に頼る進化論より、創造論の方がはるかに素直で受け入れやすい」と語った。
次回は「恐竜化石の謎」と「放射年代測定の謎」を解説しながら、進化論の実態に迫る。今回の講演内容や次回の案内など、講演会に関する情報は、ホームページで随時発信していくという。