紛争当事国・地域の宗教指導者や政治指導者らを招いて話し合う「諸宗教平和円卓会議」の2回目の会議として、「第2回東京平和円卓会議」が19日から21日にかけて、ハイアット・リージェンシー東京(東京都新宿区)で開かれた。ウクライナやロシア、イスラエル、パレスチナを含めた16カ国・地域から約100人が参加。キリスト教や仏教、ヒンズー教、イスラム教、ユダヤ教など、さまざまな宗教から代表者が集まり、「戦争を超え、和解へ」をテーマに3日間にわたって対話を重ねた。
「第2回東京平和円卓会議」が開幕、岡田克也元外相らが出席>>
21日午後に行われた閉会式では、3日間の成果をまとめた声明文を発表。現在進行中の全ての紛争の停止や、積極的平和の推進に向けた宗教界と各界の協力などを呼びかけるとともに、紛争被害者への人道支援、宗教間協力の推進、諸宗教平和円卓会議の継続的な開催など、今後の取り組みについて示した。
1回目の諸宗教平和円卓会議は、ロシアがウクライナに軍事侵攻を開始してから約半年後の2022年9月、両国の正教会指導者を含め14カ国から約50人が参加して、同じく東京で「第1回東京平和円卓会議」として開かれた。前回に続き再び参加した両国の正教会指導者は今回、隣り合った席に座って会議に臨んだ。
このことについて、主催団体の一つである世界宗教者平和会議(WCRP)国際委員会のエマニュエル・アダマキス共同議長(コンスタンティノープル総主教庁カルケドン府主教)は、「ポジティブなステップ」と評価。「いかなる会議でも同じテーブルに着いて話し合うこと自体がポジティブであり、付加価値を与えるもの」と話した。
その一方で、「奇跡が起こることを期待していたわけではない」とも述べ、紛争における最終的な解決は、宗教指導者ではなく政治指導者の手に委ねられている問題だとする考えを示した。また、「われわれは、全ての問いに対して答えを出すという期待を持って(会議に)来たのではない。危機に瀕している地域で、その状況を平和的に解決するために貢献したいという思いで来たのだ」と話した。
1回目の会議が開かれた後のこの1年半の間には、パレスチナのガザ地区で新たな戦争が勃発。ガザ地区を実効支配するハマスの襲撃により、イスラエルでは建国以来最大とされる死者が出たが、ガザ地区における死者はさらに多く、3万人に近づいている。今回の会議には、新たにイスラエル、パレスチナ双方の宗教指導者も参加し対話が行われた。
ユダヤ教のラビ(指導者)らによるイスラエルの人権団体「ラバイズ・フォー・ヒューマンライツ」(RHR)のアビ・ダブシュ最高責任者(CEO)は、昨年10月7日のハマスによる襲撃で友人が殺され、自身も自宅を失ったことを明かした。その上で、「私たちの地域、また世界をより良い場所にするためには、多くの祈りが必要ですが、それにも増して、さらに多くの良い行動と行いが必要です」と話した。
パレスチナ難民としてエルサレムで生まれたWCRP国際委員会のムニブ・ユナン名誉会長(ヨルダン聖地福音ルーテル教会名誉監督)は、ダブシュ氏との対話の中で、イスラエルとパレスチナの「2国家共存」は現在においても実現可能だということで一致できたことを強調。そのためには米国や欧州各国の支援が必要だとし、また日本に対してもその実現のために尽力してほしいと求めた。
この他、WCRP国際委員会のケゼビノ・アラム共同議長(シャンティ・アシュラム会長)は、紛争地域では対話すること自体が困難であるとし、今回の会議が対話のための「安全な場」となったことを話した。
また、WCRP国際委員会のフランシス・クーリア・カゲマ事務総長(アフリカ宗教指導者評議会事務総長)は、対立的な関係を友好的な関係に変えていくことこそが「宗教の力であり、言葉の力」だと指摘。「友好的な関係をさらに強化していくことが重要。そうすることによって、憎悪、分断、苦々しい思いを克服していくことができる」と話した。