パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム組織「ハマス」が昨年10月7日、イスラエルに対して虐殺行為を含む大規模な攻撃を加えたことを発端に、ガザ地区で戦争が始まってから4カ月。戦争はいまだに終わりが見えない状況にある。この戦争をイスラエルはどのように見ているのか。
キリスト教オピニオンサイト「SALTY(ソルティー)」論説委員の明石清正牧師(カルバリーチャペル・ロゴス東京)が昨年12月、ギラッド・コーヘン駐日イスラエル大使に単独でインタビューをした。インタビューから既に1カ月半ほどたっているものの、明石牧師は「その内容はほとんど古びていません。それどころか、イスラエルが今の状況をどのように考えているのかを理解する上で重要な鍵となる言葉を、大使は次々と発しています」と話す。ソルティーに掲載されたインタビューを、一部省略・編集した上で掲載する。(第1回から続く)
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――ニュースで扱われているパレスチナ人の死者数は、ハマス側が発表していますが、これは民間人と戦闘員の死者数を一緒くたにしています。イスラエル側では、どのようにして民間人と戦闘員の死者数を分けていますか。
そう、そこが問題です。ハマスが発表する人数は信用できないのです。(ガザ地区の死者数を発表する)保健省は、ハマスの配下にあります。民間人の死者は、残念ながら出ています。その中には、ハマスの戦闘員もいて、彼らは軍服を着ていないのです。銃を取ったときに初めて、その違いが分かるという状態です。
ハマスの戦闘員の死者は(昨年12月20日時点で)1000人ほどだと思います。捕虜にしている者たちもいます。しかし死者のうちの、民間人とハマスのテロリストの割合について、正確な数字は分かりません。ハマスは、そのことをもって、イスラエルが病院を空爆したと悪玉にしようとしています。実際は、彼らのロケット弾が病院に落ちています1。
これが、民主主義国がテロ組織と戦うときの姿であり、問題なのです。イスラエルは自国民を守るために戦いますが、ハマスは市民を人間の盾にして、市民の中に隠れるのです。モスク、学校、民間の建物の下に隠れるのです。私たちが民間人を殺したと、非難の矛先を向けさせようとするのです。
私たちは、誰も死んでほしくありません。子どもを含め民間人は死んでほしくありません。ハマスにだけ銃弾が当たってほしいのです。これは、パレスチナの人々に対する戦いではなく、ハマスに対する戦争です。
――人質のご家族が来日されました。イスラエル政府は人質解放のために、対ハマスの戦闘の他に何をしていますか。
政府がハマスと戦っているのは、人質を解放するためですが、ハマスはトンネルに隠れるなどしており、その作戦は困難です。諜報活動もしています。しかし軍事攻撃によって、ハマスに圧力をかけられるので、それによって交渉の条件が良くなります。
人質約100人を解放するための交渉で、戦闘を一時休止しました。1人につき3人の囚人を、イスラエルは解放しました。これら囚人は犯罪者たちです。イスラエル人を殺すなどしたテロ犯なのです。裁判所の法廷で判決を受けた者たちです。それに対して、私たちの人質は無辜(むこ)であり、拉致されました。なぜこのことを言うかといいますと、パレスチナはこれを人質交換だと言うからです。しかし、イスラエルが解放するのは人質ではありません。
今、2回目の人質と犯罪人の交換のための交渉をしています。その時、戦闘は休止します。(ハマスとの交渉を仲介する)エジプトとカタールは、大きな助けになっています。米国もそうです。軍事的な圧迫によって、今と将来の取り引きを有利に進めます。私たちの(軍事攻撃の)目的は、人質解放です。そして、生きている人質のみならず、遺体の引き取りも交渉しています。(続く)