英国国教会は13日から3日間の日程で総会を開催し、最終日の15日には主教会に対し、同性カップルの祝福を含む「愛と信仰の祈り」を奨励するとともに、同性カップルを祝福する単独の礼拝のための典礼を導入するよう勧告する動議を可決した。
動議の採決は、主教会、聖職会、信徒会に分かれて行われた。3つの会全てで賛成が上回ったものの、主教会は賛成23、反対10、棄権4、聖職会は賛成100、反対93、棄権1、信徒会は賛成104、反対100、棄権0と、聖職会と信徒会はいずれも僅差で、反対派の懸念も浮き彫りになる結果となった。
信徒の立場で総会に初めて出席したアリアノア・スミスさんは採決前、「司牧指針が不完全で、法的助言に関する透明性が欠如している中、このような重要なことに投票するのは賢明ではなく、また慎重ではないように思われました」と述べ、反対票を投じると述べていた。
2人いる聖職会の共同議長のうちの1人であるケイト・ウォートン牧師も同様の見解を示し、この動議を可決することは、「司牧的に無責任であり、実務的に無責任であり、神学的に無責任であり、合議的に無責任です」と非難していた。
英国国教会は既に2月の総会で、同性カップルの「祝福」を認めるとする主教会の提案を支持する動議を可決している(関連記事:英国国教会、総会で同性カップルの「祝福」認める修正動議可決 結婚の教義は維持)。この際、来賓として総会に出席したアレクサンドリア聖公会の首座主教であるサミー・フォージー・シェハタ大主教は、英国国教会が同性婚を祝福するという「一線」を越える決定をした場合、世界の聖公会が分裂する可能性があると警告していた。
今回の総会でも、出席者から動議の可決が英国国教会にもたらす影響について懸念する声が上がった。
セントエベス教会(オックスフォード教区)のボーン・ロバーツ牧師は採決前、「この動議が可決されれば、全ての小教区、首席司祭管轄区、教区において、最も深いレベルで英国国教会という布地が引き裂かれることになります」と懸念を表明した。
ロンドンの活気ある多民族教会「フェイスハウス」のエイドリアン・クラーク牧師は、自らの教会の信徒らを代表して次のように語った。
「私の(教会の)信徒の多くは(自分たちがキリスト教を信仰することで)、(故郷の)パキスタン、アフガニスタン、中国で家族が命の危険にさらされていますが、さらに多くの信徒が、そうなったとしても神の言葉そのものである聖書を守ることを望んでいます。そのため彼らは私に、これらの(同性カップルを祝福する)祈りが可決された場合、この教会が英国国教会を脱退するか、彼らがこの教会を去るかのどちらかであると言っています」
主教会は10月、礼拝で「愛と信仰の祈り」を使用することを奨励することで合意しており、今回、総会がその方針を認めた形。主教会は12月中旬に予定されている次回会合にも、「愛と信仰の祈り」の奨励を行うことが見込まれている。
一方、同性カップルの祝福を巡る議論は、神の言葉、教会学、救いそれぞれに対するより深い意見の相違が表れたものだと指摘する声もある。
英国の大衆伝道者J・ジョン氏の息子であるベンジャミン・ジョン氏は、採決前に行われた討論会で、「私たちは、聖書とそれが教えていることに対する信頼を失っています。私たちは、これ(同性カップルの祝福)が、本当に主が教えておられることなのか、『神は本当に言われたのだろうか』と疑っています」と述べ、テサロニケの信徒への手紙一4章7〜8節にある使徒パウロの次の言葉を引用した。
「神がわたしたちを招かれたのは、汚れた生き方ではなく、聖なる生活をさせるためです。ですから、これらの警告を拒む者は、人を拒むのではなく、御自分の聖霊をあなたがたの内に与えてくださる神を拒むことになるのです」
それでも、主教23人、聖職者100人、信徒104人の多数が賛成に回った。中にはジョン氏らが投げかけた警告を「脅し」と表現する者もおり、セントメアリー教会(サザーク教区)のサイモン・バトラー牧師は、英国国教会の総会が「分裂を推奨している」と非難した。
英国国教会の主席聖職者であるカンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビーと、次席聖職者であるヨーク大司教スティーブン・コットレルは採決後、次のように語った。
「私たちは、2日間にわたる広範な議論を通じて、これらの非常に重要な問題に対する教会全体の感情の深さをはっきりと聞きました。特に私たちは、『愛と信仰の祈り』に関する総会の以前の決定を実行しようとする主教たちの方法について、深く心のこもった懸念を聞いてきました」
「この動議は僅差で可決されましたが、われわれは感情の深さを過小評価せず、共に前進するために耳にした全てのことを熟考するつもりです」