カリブ海の島国ハイチで、ギャングに誘拐され、身柄を拘束されていたキリスト教団体の米国人女性看護師とその娘が無事解放された。
看護師のアリックス・ドルサインビルさんが働いていたハイチのキリスト教団体「エリ・ロイ・ハイチ」は9日、約2週間前にギャングに誘拐され、身柄を拘束されていたアリックスさんとその娘が無事解放されたことを、ホームページ(英語)で発表した。
エリ・ロイ・ハイチは、「今日、私たちは祈りがかなえられ、神を賛美しています」と喜びをあらわにするとともに、「この危機的状況の中、私たちと共に祈り、支えてくださった皆さんに心から感謝します」と述べた。
アリックスさんは7月27日、ハイチの首都ポルトープランス近郊の診療所で、患者らに医療的ケアを提供していたところを誘拐された。これまでの報道によると、ギャングはアリックスさんら2人の解放と引き換えに、身代金として100万ドル(約1・4億円)を要求していたとされる。
米国務省のマシュー・ミラー広報官は同日の記者会見(英語)で、身代金の支払いの有無など詳細には言及しなかったものの、「われわれは2人の解放の知らせを歓迎します」とコメント。「われわれにとって、海外にいる米国民の安全と安心以上に優先すべきことはありません。彼らの安全な解放のために尽力してくれたハイチと米国の関係省庁に深く感謝します」と述べた。
エリ・ロイ・ハイチも、2人が解放されたこと以外の詳細については明らかにしておらず、「このような状況では、まだ多くのことを処理し、癒やす必要があるため、現時点ではアリックスや彼女の家族に連絡を取ろうとしないようお願いします」と要求。今後もホームページを通じて、適宜情報を発信していくとしている。
アリックスさんは、30万人以上の犠牲者を生んだ大地震が起きた2010年に、初めてハイチを訪れた。当時はまだ学生で、その後も休暇や夏休みを利用して訪問を繰り返し、看護師になってからも自費で何度も訪れ、現地の人々に奉仕する活動をしていたという。エリ・ロイ・ハイチでは20年から働き始め、21年には創設者で代表のサンドロ・ドルサインビルさんと結婚していた。
ハイチでは、21年7月に大統領が暗殺されるなど政情不安が続いており、それを背景にギャングによる誘拐事件が多発している。同年10月には、米国人とカナダ人の宣教師家族計17人がギャングに誘拐される事件が発生している。この事件は、健康上の理由などから5人が先に解放されたものの、12人が約2カ月間にわたって拘束され、ギャングらの隙を見て自力で脱出したことで解決に至っている(関連記事:ハイチ宣教師誘拐事件、家族が証言 身代金支払われるも誘拐犯の間に分裂)。