世界的に有名な大衆伝道者、故ビリー・グラハム氏の米ノースカロライナ州モントリートにある旧宅が、地元の実業家やクリスチャン俳優らの協力によって、牧師や宣教師のためのリトリートセンター(修養施設)として活用されることになった。旧宅は、グラハム氏が自身の伝道活動において最も重要な時期に妻子と共に住んでいた場所だった。
グラハム氏の旧宅に開設されたのは「ビリーズ・ホーム・プレイス」。ウェブサイト(英語)によると、この計画を実現させたのは、同州シャーロットの実業家スティーブン・トーマス氏、クリスチャン俳優のカーク・キャメロン氏、グラハム氏の三女で作家、講演家のルース・グラハムさんの3人。
ウェブサイトは、この新しいリトリートセンターについて、「牧師たちの力を回復させる幾つかの体験を提供するとともに、神の御言葉に深く触れることを通して、信じる者たちが神の御心を発見することを助ける」施設だと説明。また、牧師や宣教師として20年以上奉仕してきた人々であれば、フォームに必要事項を記入することで、無料で利用できるとしている。
ルースさんは、グラハム氏が1940年代後半にこの旧宅を購入したときのことを、米キリスト教メディア「クリスチャンポスト」に対し、次のように語っている。
「私の祖父母が住んでいた家の向かい側にあったので、この家が選ばれました。私が生まれたのは、家族がこの家に住んでいた時期です。ロサンゼルスクルセード(48年開催の伝道集会)や英国遠征(54年)もその頃でした。ここは全てが始まった場所なのです」
グラハム家は1957年にこの旧宅から引っ越したが、モントリートの町にとどまった。
旧宅はこの1年余り、貸別荘として利用されてきた。宿泊客は、コテージにあるオリジナルの家具、本、写真、思い出の品々を通して、グラハム家の若き日の家族生活を追体験することができた。木造2階建てで、今でも綺麗な状態に保たれており、絵のように美しい幾つかの散歩道や小川に囲まれている。
貸別荘となったのは、1年半前、難病を抱える娘の治療費を捻出するため、ルースさんが旧宅を売りに出したためだ。旧宅は初め、59万9千ドル(約7900万円)で売りに出されたが、オンライン不動産情報サイト「レッドフィン」(英語)によると、2021年9月1日に、当初の販売価格を大きく上回る75万ドル(約9900万円)で売却された(関連記事:ビリー・グラハム氏が家族と過ごした家売却へ、孫娘の難病治療費捻出のため)。
ビリーズ・ホーム・プレイスのウェブサイトは、次のように紹介している。
「キリスト教の歴史と福音の遺産に恵まれたこの質素な邸宅は、良く生きた一人の人物の遺物であるにとどまりません。むしろこの家は、グラハム博士の遺産を引き継ぐ役割を担っているのです。疲れた牧師や宣教師のための隠れ家、神の御顔を求めるための慰めです。ビリーズ・ホーム・プレイスは、そのために設立されたのです」
また、旧宅は神の油注ぎの象徴として機能し、神はこの場で、イエス・キリストの福音を世界に伝えるために「謙遜な僕(しもべ)」を用いることを選んだと指摘。グラハム氏は、2階の書斎にある小さな机で説教原稿を書いたり、勉強したりすることが多かったとし、その蔵書は、悔い改めない魂やキリストを必要とする人々のために祈ることに、グラハム氏が数えきれないほどの時間を費やしてきたかを示しているとしている。
グラハム氏はやがて「米国の牧師」と呼ばれるようになり、世界中の球場や競技場で伝道集会を行うようになる。しかし、ウェブサイトは、その初期の伝道活動は、山奥にあるこの地味な旧宅の暖炉やキッチンテーブルで展開されたのだと記している。