日本のカトリック教会は10日、「性虐待被害者のための祈りと償いの日」を迎えた。聖職者による性的虐待が世界的に明るみに出る中、ローマ教皇フランシスコが2016年に各国の司教団に制定を指示したもので、日本では四旬節第2金曜日とされ、今年は10日がその日に当たる。
この日に先立ち、日本カトリック司教協議会会長の菊地功大司教(東京大司教区)は、カトリック中央協議会のホームページに、日本のカトリック信者に向けた呼びかけの文書を掲載した。文書では、率先していのちを守り、人間の尊厳を守るはずの聖職者が、性的虐待という人間の尊厳を辱め踏みにじる行為を行い、長期にわたって被害者に苦しみを与えてきたとして謝罪。日本のカトリック教会の取り組みを説明し、被害者の癒やしのために祈るとともに、聖職者がふさわしい務めを果たせるように祈るよう求めた。
カトリック教会の聖職者による性的虐待は、米ボストンの地元紙が02年、70人以上の聖職者が過去に信者の子どもたちに対して性的虐待を行い、教会が組織ぐるみで隠蔽(いんぺい)していたことをスクープし、それがきっかけとなって世界各地で明るみになっていった。
日本のカトリック教会もこれを受け、司教団が同年に調査を実施。日本でも同様の事例が存在することが判明し、「子どもへの性的虐待に関する司教メッセージ」を発表した。また、03年には司教のための対応ガイドラインを発表し、「子どもと女性の権利擁護のためのデスク」を設置するなどした。
国内における調査は、同デスクが12年に実施したほか、司教団が19年に再調査を実施。20年には、その後の追加調査なども含めて結果が公表され、聖職者から性的虐待を受けたという訴えは16件あったことが分かっている(関連記事:日本のカトリック聖職者による児童性的虐待、訴えは16件 司教協議会が調査結果を発表)。
一方、調査結果発表後の同年6月には、国内で初めて実名で被害を告発した東京都在住の男性らが「カトリック神父による性虐待を許さない会」を設立。同年9月には、宮城県在住の女性が、カトリック教会の聖職者による性暴力を巡り国内では初となる訴訟を起こした。さらに、同年12月には、長崎大司教区の聖職者から性被害を受けた女性が、当時同大司教区トップで司教協議会会長の立場にあった髙見三明大司教(現名誉大司教)の発言により2次被害を受けたとして提訴。昨年2月、髙見大司教の発言は「注意義務に違反する」とし、同大司教区に110万円の損害賠償を命じる判決が出ている。
こうした中、菊地大司教は今回の文書で、21年には司教総会が「未成年者と弱い立場におかれている成人の保護のためのガイドライン」を決議し、昨年には司教協議会会長直属の部門としてガイドライン運用促進部門を別途設置したことなど、この1、2年の取り組みを説明。「聖職者をはじめ教会全体の意識改革などすべきことは多々あり、教会の取り組みもまだ十分ではありません」と認めつつ、「ふさわしい制度とするため、見直しと整備の努力を続けてまいります」と述べた。
その上で、「無関心や隠蔽も含め、教会の罪を心から謝罪いたします」と重ねて謝罪の意を表明。「神のいつくしみの手による癒やしによって被害を受けられた方々が包まれますように、心から祈ります」と述べるとともに、「同時に、わたしたち聖職者がふさわしく務めを果たすことができるように、お祈りくださいますようお願いいたします」と求めた。