東京神学大学(東京都三鷹市)の元学生がプライバシー権を侵害されたなどとして、同大の芳賀力学長らに慰謝料400万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(宇賀克也裁判長)は15日、芳賀氏の上告を棄却した。芳賀氏は2審の東京高裁でも控訴を棄却されている。これにより、プライバシー権侵害の不法行為を認め、芳賀氏に20万円の損害賠償を命じた1審の東京地裁の判決が確定した。
東京地裁の判決によると、当時学長代行であった芳賀氏は2019年10月、日本基督教団静岡教会(静岡市)で開催された同大後援会による講演会後に、牧師7、8人に対し、元学生の入学試験の内容や在学中の成績、元学生に関する教授会の議論の内容や決定事項について発言した。
これについて元学生は、プライバシー権の侵害に当たると主張。一方、芳賀氏は、元学生の実名は出さずイニシャルで呼んでおり、成績についても大学院進学に必要となる形式的な基準に達していなかった事実を説明しただけだったなどと主張した。なお、元学生によると、同大に在籍していた最初の2年間は、成績が基準に達していなかったものの、3年目には基準に達したという。そして、19年3月には基準に達した状況で同大を卒業しているという。
東京地裁は、元学生は当時、同大でハラスメント問題を訴えており、同大関係者の間では広く認識されていたと指摘。芳賀氏の発言が元学生に関するものであることは、話を聞いていた牧師らも認識していたと認められるとした。
その上で、芳賀氏が発言した内容は、元学生の「公表されていない私生活上の事実」であり、「他者に開示されることを欲しないと認められる情報であるといえる」とし、元学生のプライバシー権を侵害するものと認めた。
元学生はこの他、▽19年9月に同大礼拝堂で行われた前学長の葬儀で述べた芳賀氏の弔辞、▽同年10月度の学報に掲載された芳賀氏の寄稿、▽静岡教会で行われた講演会における芳賀氏の発言、▽同講演会後における芳賀氏のその他の発言について、名誉毀損または侮辱に当たると主張したが、これらについては認められなかった。
また、同大の当時の理事長による名誉毀損、理事長と芳賀氏による共同不法行為についても主張したが、いずれも認められなかった。