中米ハイチで米国人宣教師ら17人が地元のギャングに誘拐された事件で、妻と子ども5人が事件に巻き込まれたレイ・ノエッカー氏(49)がこのほど、メディアの取材に応えた。ノエッカー氏によると、身代金は支払われたものの、誘拐犯らは人質全員の解放を拒否。そうした中、最後まで残された12人が自力で脱出したという。
ミシガン州在住で自身も宣教師であるノエッカー氏は、地元メディア「MLive」(英語)の取材に応じ、「誘拐犯らとの間には身代金に関する合意があり、私の妻と息子ともう一人の女性が解放された日曜日(12月5日)の夜に身代金が実際に支払われたと理解しています」と語った。
地元テレビ局「WZZM」(英語)によると、最後まで残された人質12人は、誘拐犯らが携帯電話の充電に時間を取られている間に脱出を図った。12人が大胆な脱出計画を実行したのは、12月5日にノエッカー氏の妻シェリルさん(48)と息子のシェルドン君(6)を含む3人が解放されてから10日後の12月15日、誘拐されてから2カ月後のことだった。この12人の中には、ノエッカー氏の他の子どもたちであるシェリリンさん(27)、コートニーさん(18)、ブランドンさん(16)、コサンドラさん(14)の4人も含まれていた。
誘拐犯らは、11月21日には他の宣教師2人も解放していたが、これは2人の健康上の理由のためと伝えられている。
現地の牧師たちを教える準備をしていたため、家族の中で唯一事件に巻き込まれなかったノエッカー氏は、身代金の金額や、誰が支払ったかは知らないとしつつも、10月16日に誘拐された17人全員分の身代金として支払いが行われたと語った。
「身代金の合意は(誘拐された)全員に対するものでしたが、ギャング内に分裂があり、その時点(12月5日)では全員を解放することができませんでした。だからギャングは人質たちに対して、私の妻ともう一人の女性が健康状態を理由に解放されると伝えたのでしょう」
一方、米マイアミ・ヘラルド紙(英語)が関係者の話として伝えたところによると、11月21日に最初の人質2人が解放された際は、ギャング側が人質の解放のために計1700万ドル(約19億)を要求していたにもかかわらず、身代金は支払われなかったという。
17人が所属する米キリスト教慈善団体「クリスチャン・エイド・ミニストリーズ」(CAM)は、全員が解放された後に記者会見を開き、最後まで残された12人が脱出を何度も計画し、祈り、神の導きの中で、計画を実行したことを紹介した(関連記事:ハイチで誘拐された宣教師らの大胆な脱出劇、所属団体が内幕明かす)。
ノエッカー氏によると、人質を監視していた誘拐犯らは、夜に携帯電話を充電する際に延長コードの周りに集まっていたという。脱出した日の夜は大雨で延長コードが水に漬かり、誘拐犯らは建物の反対側で携帯電話を充電しなければならず、脱出の好機が生じた。
CAMの広報担当者の説明によると、12人は監禁場所を逃れると、目印となっていた山に向かって歩き、星明かりの下、北西に進んだ。
「神の助けと守りと導きにより、彼らは夜を徹して速やかに移動しました。森ややぶを抜け、いばらやとげ(のある植物)の中を通り抜け、16キロほど歩きました。人質の一人は、『ものすごいやぶの中を2時間は歩きました。私たちはずっとギャングの支配地の中にいたのです』と話していました。月が彼らの行く道を照らしてくれました。どちらに進めばよいのか分からなくなったとき、彼らは立ち止まって祈り、神に道を示してくれるよう求めました」
ノエッカー氏の家族7人がミシガン州に戻ったのは昨年12月30日。その数日後の今月2日には、彼らの無事の帰還を祝う記念集会が開かれた。「私たちはただ、神がなさったことを祝いたいのです」。ライアン・バンダーズワ牧師はそう言い、「私たちは祈り、神は答えてくださったのです」と語った。
今回の誘拐事件にもかかわらず、ノエッカー氏は、神が自身の家族に対しハイチに戻って宣教するよう召しているのであれば、その召しに答えるつもりだとWZZMに語った。
「神は、傷ついた人々に奉仕するようにと、私たちをお呼びになります。だから、私たちは家族で(ハイチに)行ったのでしょう。人々の生活に変化をもたらす必要性と機会があったからです」