中国東部の浙江省温州市で、事前の告知なく5つの教会から十字架が撤去された。温州市は中国でも特にキリスト教徒が多く、「中国のエルサレム」と呼ばれている地。浙江省では十字架を撤去する政府主導の迫害が7年前に本格化し、2年間で千以上の教会が被害に遭ったが、その再来に懸念が高まっている。
迫害監視団体「殉教者の声・韓国」(VOMK)によると、直近の十字架撤去は1月15日夜に始まり、竜湾区の永中街道滄河(そうか)基督教会など市内の4つの教会が被害に遭った。さらにその後、2月1日未明には市内の水心基督教会でも十字架が撤去された。
VOMKのヒョンスク・フォーリー理事長によると、地元の政府関係者がクレーン作業員を雇って十字架を撤去したという。被害に遭った教会の中には、すでに2014年に一度、十字架の撤去を経験した教会もあった。これらの教会はその後、以前より小型の十字架を設置していたという。
フォーリー氏によると、永中街道滄河基督教会の教会員は1月16日、地元公安局に「教会の十字架が盗まれた」と被害届を提出した。しかし、温州市公安局竜湾区分局は「盗まれた十字架は本公安局の管轄には該当しない」とし、「公安機関が捜査に当たることはない」と通達したという。
地元の牧師たちは、政府による十字架の撤去が2021年も行われる可能性があると予想していた。温州上江教会の厳暁潔(ヤン・シャエジェ)牧師はソーシャルメディアに、「悪の波は2021年に再来するだろう」「またもや強制解体、違法解体、無差別解体、夜間解体が」と投稿していた。フォーリー氏は「実際、最新の十字架撤去は暗闇の中で行われたのです」と強調した。
永中街道滄河基督教会と水心基督教会は共に100年以上の歴史がある教会だった。浙江省はキリスト教人口が100万人を超え、特にキリスト教徒が多い温州市には、公式に登録されているだけでも千以上の教会が存在する。
温州市における十字架の撤去は2014年2月から本格的に始まった。中国共産党浙江省党委員会書記(当時)で、習近平国家主席の元側近として知られている夏宝龍氏が、省内のすべての十字架を撤去するよう命令。同省ではそれから2年の間に千以上の教会から十字架が強制的に撤去された。
14年4月には、完成目前だった温州市の公認教会である三江教会が、違法建築を理由に取り壊される事件も発生した。2千人収容可能な中国でも指折りの規模の教会堂となるはずだったが、数千人の信者たちが教会周辺で抗議する中、取り壊しが強行された(関連記事:中国政府、キリスト教会への迫害を開始? 温州市の三江教会が取り壊される)。温州市ではこの他、半年の間に聖職者が行方不明となる事件が20件も発生するなどした。
フォーリー氏は、「これら5つの教会に対し2度にわたって行われた夜襲は、十字架の撤去が過去のものではないことを示しています。私たちは温州市の教会と中国全土の教会のために立ち上がり、熱心に祈る必要があります」と訴えた。
VOMKは、中国の「家の教会」と協力して活動を行っており、寄付の受け付けも行っている。寄付に関する詳細はこちら(英語)。