「イエスは言われた。『剣をさやに納めなさい。剣を取る者は皆、剣で滅びる』」(マタイ26:52)
「非暴力とは何か。それは、すべての人を等しく愛することのできる力のこと。だから、子どもも女性も年老いた人も、この非暴力というパワーの担い手になれる」(『ガンディー魂の言葉』より)
去る3月5日、日本友和会(JFOR)の友人3人と共に、ずっと願っていた宮古島に行くことができました。日帰りではありましたが、現地の闘いのリーダーであられる「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」の清水早子さんと、日本基督教団宮古島教会の牧師、坂口聖子さんの並々ならぬご愛労によって、お二人の熱きお心からほとばしり出るお話を聞かせていただきながら、現地を案内していただきました。
現地に立ち、この目で見て、漠然と想像していた世界がパッと現実として目の前に広がったとき、そこに見える自衛隊の軍事基地の存在に衝撃を受け、言葉を失ってしまいました。スカイブルーの美しい海に囲まれた農業と観光の平和な島、宮古島に巨大な軍事基地が姿を現し、急ピッチで工事が進んでいるこの現実を直視しなくてはなりません。造られた基地の中に住民が大切にしていた拝所があり、その緑の森は無残にも小さく削り取られ、自由に出入りしてお祈りする自由さえも侵害されていました。何棟もの宿舎が立ち並び、いろいろな建物がまだ今後も造られる予定で、これで半分とのこと。私たちが沖縄本島で見ている米軍基地と何ら変らない巨大な軍事基地が急ピッチで造られていました。
宮古島は琉球石灰岩でできた島で、軟弱地盤であり、地下には無数の空洞があり、断層も走っていますが、それらはお構いなし。うそとごまかしで弾薬庫や地下施設が造られています。工事の現場で働いているは、日給わずか4500円で雇われているベトナム人労働者たち。窓が目隠しされた作業員宿舎に閉じ込められ、労働環境、生活環境はどうなのか、防衛省は業者任せで実態を把握していないとは! アジアを侵略し、強制連行、強制労働を行ったこの国の歴史と重なり、許し難い思いでした。住民への説明もまったくないままにミサイルが持ち込まれていることが判明し、住民の反対抗議に押され、いったんは撤去せざるを得ませんでしたが、いずれミサイル基地は造られ、海兵隊、空母、戦闘機が配備されるでしょう。
レーダー基地からは深刻な電磁波被害があり、電磁波の強度は、何と欧州評議会議員会議が「安全の目安」としている値の2千倍という恐るべき数値が出ており、住民への健康被害は甚大だと思います。また宮古島の水源はすべて地下水なので、水汚染が心配です。住民よりも軍事優先の実態。軍隊は決して住民を守りはしません。宮古島の現実を直視したとき、この美しい島が安倍政権によって軍事基地化されていく現実にやりきれない怒り、悲しみ、悔しさが込み上げてきて胸がいっぱいになりました。そして宮古島から、辺野古が、日本が、より鮮明に見えてきました。辺野古でもまた、民意を無視して、先が見えなく何があろうとも、宮古島で見たように、なりふり構わず埋め立てを強行していくでしょう。これが安倍政権であり、日本なのです。
既に奄美大島ではミサイル基地が開設され、奄美駐屯地は奄美警備隊の配属地として3月末に記念セレモニーが行われています。石垣島にも同じことが計画され、住民への説明もないままに強行されようとしています。こうして戦後74年、自衛隊基地のなかった平和な南西諸島は奄美、宮古、石垣と引かれた防衛ラインの下に急ピッチで軍事基地化が進み、戦後守ってきた憲法9条も危くなり、いよいよ自衛隊が軍隊として大手を振って私たちの生活を脅かすようになりました。
台湾に近い与那国島では既に、3年前に自衛隊基地が完成し、行政は自衛隊人口の増加により選挙も支配され、国の統治下に置かれています。なぜここまで急ピッチで安倍政権は南西諸島の軍事基地化を進めるのでしょうか。米国は自国の金を使わずに、日本の自衛隊によって南西諸島防衛ラインを守らせ、いざという時は米国に代って日本に戦争させようとしているのです。安倍政権がなぜ、憲法9条に自衛隊を明記することを急ぐのか。その背景に米国の意向が見えてきます。これからは空自、米軍、海自と三者による軍事訓練により、空も海も陸も汚染され、沖縄の人々の生活環境は戦後74年にしてなお悪化し続け、ここにまた新たな琉球処分、沖縄捨て石作戦が行われているのです。
沖縄の民意を踏みつぶし、欺瞞(ぎまん)と謀略に満ち、弱き者を助けず、1機140億円もの戦闘機を147機購入し、防衛費は年間5~6兆円。正義が消え失せた日本。新元号にさわぎ立ち、天皇を利用して右傾化へ、軍事大国へと驀進(ばくしん)しているこの国。教育は変えられ、多様性と自由な発想は否定され、画一化された、国に従う人間をつくろうと進み出しています。沖縄から見える私たちの国、日本の危機的状態が本土の人々には見えているのでしょうか。沖縄の人々は「ワジワジー」(「いらいら」の意味)しています。何度でも問いたいです。「なぜ安倍政権をこんなに長く許しているのですか」と。
私たちの希望のシンボルだったジュゴンが1頭、傷だらけの痛ましい姿で、本島北部の浜に打ち上げられ死んでいました。残りの2頭の姿も見えなくなっています。誰がジュゴンを殺したのですか。この海を埋め立てて基地を造る人間の悪がジュゴンを殺したのです。大浦の海を悠々と泳ぐ海ガメたちの姿があります。これ以上工事が進めば、海ガメはどこで生きるのでしょうか。私たちは決して叫ぶことをやめはしません。非暴力で闘い続けます。それは人間だからです。海に土砂を投入しても私たち人間の心を埋め立てることは決してできません。
「主は国々の争いを裁き、多くの民を戒められる。彼らは剣を打ち直して鋤(すき)とし、槍(やり)を打ち直して鎌とする。国は国に向って剣を上げず、もはや戦うことを学ばない」(イザヤ2:4)
この神の御心が必ず成る日を信じて叫び続け、祈り続けたいと思います。
◎宮古島の連絡先
ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会(電話:090・9784・1545)
ブログ:琉球弧の軍事基地化に反対するネットワーク
◎来る21日は、沖縄第3区(うるま・沖縄・名護・北部)の衆議院議員補欠選挙です。相手候補は辺野古基地建設推進の安倍官邸直属の女性。負けたら今までの民意はすべて否定されてしまいます。絶対負けられない選挙です。
◎沖縄は月桃の花が真っ盛り。何とも優雅な感じの花です。葉はおもちやジューシーごはんを包んだり、香りを楽しんだりします。
◎私は今月25日から28日、辺野古の仲間たち30人と共に「韓国ピョンテク基地と38度線人間の鎖」に参加します。次号にて報告します。
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石原艶子(いしはら・つやこ)
1942年生まれ。16歳で無教会の先生との出会いによりキリスト者となる。全寮制のキリスト信仰を土台とした愛農学園農業高校に奉職する夫を助けて24年間共に励む。1990年沖縄西表島に移住して、人間再生の場、コミュニティー西表友和村をつくり、山村留学生、心の疲れた人たちと共に暮らす。2010年後継の長男夫妻に委ね、夫の故郷、沖縄本島に移住して平和の活動に励む。無教会那覇聖書研究会に所属。