米シンクタンク「ピュー研究所」(本部・ワシントン)は2月27日、最新の調査報告書を発表し、イスラム教が世界で最も成長の速い宗教グループであり、世界人口の平均成長率より2倍近いスピードで増えることを示した。宗教別の人口では、2070年までにキリスト教と肩を並べ、2100年にはキリスト教を追い越し、世界最大の宗教になるという。
ピュー研究所の報告書「イスラム教徒とイスラム教:米国と世界各国における主な調査結果」(英語)によると、キリスト教人口は2050年までに35%増加するが、イスラム教人口はそれを大幅に上回り、73%も増加する。2050年までの世界人口全体の増加率は37%で、イスラム教人口はそれよりも2倍近く速く増えることになる。
2010年のキリスト教人口は21億7千万人で、イスラム教人口は16億人。これが2070年までに、それぞれ29億2千万人(31%)、27億6千万人(30%)に達し、ほぼ肩を並べる。さらに2100年までには、イスラム教人口が世界人口の35%となり、キリスト教人口(34%)を1%上回ると予想されている。
米国のイスラム教人口は現在、約330万人で人口の約1%を占めているが、2050年までには2・1%にまで増えると見込まれている。さらに欧州では、2050年までにイスラム教人口が10%に達するとみられている。
一方、無神論者や信仰を持たない人の数は減少すると予想されている。北米と欧州では増加するものの、世界的には現在の16・4%から、2050年までに13・2%にまで減少するという。
ピュー研究所は報告書で、イスラム教の急速な成長の要因として2つの理由を挙げている。1つはイスラム教徒の出産率の高さで、イスラム教徒の女性は1人当たり平均で3・1人の子どもを産み、これは宗教別では最も多いという。もう1つは平均年齢の低さで、イスラム教徒は宗教別では最も若い人が多い宗教で、34%が15歳以下だという。
これらのデータは、ピュー研究所が2015年にすでに発表しているものだが、今回新たに発表した報告書では、米国や欧州の人々がイスラム教をどう見ているのか、また「イスラム国」(IS)などのイスラム過激派を、一般のイスラム教徒がどう感じているかなどについても調べている(関連記事:イスラム教人口、2070年にはキリスト教人口と同数に 米ピュー調査)。
米国人のイスラム教徒に対する「感情温度」(0〜100の値で数値が高い方が好意的)は48で、他の宗教を信じる人々よりも低く、無神論者(50)とほぼ同じだった。一方、2014年に行った同様の調査では、イスラム教徒に対する成人米国人の感情温度は40で、他宗教と比較すると依然低いものの、ここ数年で上昇していることが分かった。
欧州では10カ国を対象に調査を行い、ハンガリー、イタリア、ポーランド、ギリシャの欧州東部と南部の4カ国では、過半数がイスラム教徒を好意的に見ていないことが分かった。これに対し、英国やドイツ、フランスなどの国ではイスラム教徒を好意的に見ている人の方が多い結果となった。
また、イスラム教徒が多数派となる国の人々は大抵、ISなどのイスラム過激派に対して、好意的でない見方をしていることが分かった。こうした国の人々も、西欧諸国の人々と同じく、イスラム過激派の脅威に懸念を抱いていた。