中国で活動していた韓国人宣教師少なくとも32人が、国外退去させられた。さらにここ数日の間には、別のキリスト教宣教師4人が逮捕されという。カトリック系通信社「アジア・ニュース」(英語)などが伝えた。
アジア・ニュースによると、国外退去させられたのは、北朝鮮との国境に近い吉林省延吉(えんきつ)北東部を拠点に活動していた宣教師や、ここ数カ月間にこの地域を訪れていた宣教師たち。これらの韓国人宣教師たちはこの地域で伝道だけでなく、脱北者の支援もしていたとされている。
国外退去は、昨年12月から今年1月にかけて行われた。一方、韓国外務省は今月11日、韓国人の男性宣教師1人が入管法に違反したという理由で、9日に延吉で逮捕されたことを発表した。米国に拠点を置く「ラジオ・フリー・アジア」(RFA)は、韓国外務省の発表前に、韓国系米国人1人、中国人2人を含む、計4人のキリスト教宣教師が中国当局に逮捕されたと伝えていた。
アジア・ニュースによると、中国は外国人宣教師の活動を禁止しているが、韓国人宣教師に対してはこれまで、それほど厳しい対応はしてこなかったという。しかし昨年10月に「改正宗教事務規定」を発効させて以降、取り締まりを強化しているという。
アジア・ニュースはまた、対北朝鮮の目的で、韓国政府が在韓米軍に最新鋭迎撃システム「終末高高度防衛(THAAD)ミサイル」を配備する方針を決めたことに対して、中国をも標的にするものだとして、中国政府がさまざまな報復措置を行っていることを伝えている。
中国政府はまた、昨年9月にはバチカン(ローマ教皇庁)が叙階した浙江(せっこう)省温州のペトロ・シャオ・ズーミン協働司教を、当局から認可されていないとして逮捕している(関連記事:中国、バチカン叙階のカトリック司教を「逮捕」 温州教区引き継ぎ妨害か)。
アジア・ニュースの当時の記事によると、シャオ司教は、昨年9月7日に亡くなった温州教区のビンセント・ズー・ウェイファン司教の葬儀の準備をしていたところを逮捕された。シャオ司教が葬儀を司式し、同教区を継承することを阻止することを図ったとみられている。
中国のキリスト教徒に対する迫害を監視している「チャイナエイド」(本部:米テキサス州)の創立者であり、代表でもあるボブ・フー氏は昨年2月、クリスチャンポストに対し、「政府の上層部は中国でキリスト教信仰が急激に成長し、その存在感が増大し、社会的な影響力を増していることに対して、徐々に不安を感じてきているのです。中国共産党は、中国でキリスト教徒の数が共産党員の数をはるかに上回っているために、政治的な恐れを感じているのです」と語っていた。
また、国際人権NGOの「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は2016年の報告書で、中国は幾つかの問題に直面しているとし、宗教の自由を擁護してきた人々を含め、さまざまな人権擁護者が中国国内で逮捕されていることを報告している。