米国の世論調査機関「ピュー研究所」の調査(英語)によると、2016年度に米国への入国が認められた宗教的少数派の難民のうち、大部分がキリスト教徒であることが分かった。一方、宗教的多数派で米国への入国が認められた難民は、イスラム教徒が多かった。
同研究所は、米国務省難民手続センター(PRC)のデータを分析。16年度に米国に入国した難民の37%が、出身国では宗教的少数派に属していた。これらの難民のうち、キリスト教徒が61%、イスラム教徒が22%を占め、ヒンズー教徒(6%)とその他の宗教(9%)が合わせて15%を占めていた。
一方、16年度に米国に入国できた難民の約3分の2は、母国では宗教的多数派に属しており、60%がイスラム教徒で、キリスト教徒は35%、主にミャンマー出身である仏教徒は6%だった。
難民の出身上位10カ国は、コンゴ(19%)、シリア(15%)、ビルマ(15%)、イラク(12%)、ソマリア(11%)、ブータン(7%)、イラン(4%)、アフガニスタン(3%)、ウクライナ(3%)、エリトリア(2%)だった。この10カ国のうち、キリスト教が宗教的多数派となる国は、コンゴを含む3カ国だった。
16年度に米国が受け入れた難民は約8万5千人。そのうち、46%はイスラム教徒で、02年度からの調査以来、最も多かった。キリスト教徒は44%だった。
16年度はイスラム教徒の難民が多かったが、米国は過去15年間では、イスラム教徒の難民(32%)よりも、キリスト教徒の難民(46%)を多く受け入れている。
ドナルド・トランプ米大統領が1月末に、治安対策を理由に、難民や中東・アフリカの7カ国の国民の入国を一時停止する大統領令を発令したことで、ここ最近は難民の宗教について注目が集まっている。
この大統領令に対しては、サンフランシスコ連邦控訴裁(高裁)が9日、一時差し止めを命じたシアトル連邦地裁の決定を支持し、政権側からの取り消し要求を退けた。政権側は今後、控訴裁に大陪審での審理を要求するか、最高裁に上告するなどの選択肢がある。トランプ氏は控訴裁が判断を下した直後、ツイッターで「法廷で会おう」などとコメントしており、最高裁まで持ち込まれる可能性が高いとみられている。
トランプ氏はこの大統領令の発令前、米キリスト教テレビ局CBNとのインタビューで、キリスト教徒の難民を他の難民よりも優先すると語っていた(関連記事:トランプ米大統領、迫害下のキリスト教難民の受け入れ優遇を表明)。
「シリア人でしかもキリスト教徒である場合、米国への入国は不可能であるか、少なくとも非常に困難であったことをご存じでしょうか。イスラム教徒であれば入国できました。しかしキリスト教徒の場合は、ほとんど不可能でした。その理由はとても不公平です。誰もが同じように迫害されました。あらゆる人が斬首されましたが、特にキリスト教徒が斬首されました。私はそういった状況はあまりにも不公平だと思うのです」
一方、大統領令には、キリスト教徒を優先することは直接的に明記されているわけではない。そうしたこともあり、キリスト教の迫害監視団体は、トランプ氏の発言に対して複雑な心境を明かしている。
米国オープン・ドアーズのデイビッド・カリー会長は、ここ数年で迫害されているキリスト教徒の数が「信じられないほど増加した」ことをトランプ氏が認識していることを称賛した。しかしその一方で、キリスト教徒を優先させることは、もっと多くの問題を引き起こす可能性があると警告した。
「ヤジディ教徒やキリスト教徒、一部のイスラム教徒のグループなど、『イスラム国』(IS)によって意図的に標的にされている人々の難民申請を急ぐのは適切だと思われます。しかし、特定の宗教を他の宗教よりも優先してより好みするなら、既に深刻化している宗教的迫害の世界的な広がりを悪化させるだけです」とカリー氏は話している。