戦後日本の代表的な彫刻家で、長崎市西坂の「長崎26殉教者記念像」(1962年)の作者としても知られる舟越保武(1912~2002)が、同像の制作過程で書いた一連のドローイングと代表作のブロンズ像「原の城」(72年)「ゴルゴタ」(89年)を紹介する展示が11月29日から、長崎県美術館で始まった。
舟越保武は1912年、岩手県二戸に生まれ、ロダンに憧れて彫刻を始め、東京美術学校(現東京芸術大学)で彫刻の道を歩み出す。1947年に長男・一馬が生まれるが1歳にもならずに病死し、その影響から1950年のクリスマスイブに、盛岡のカトリック教会で家族全員と共に洗礼を受けた。
58年、長崎市から依頼を受けて「長崎26殉教者記念像」の制作を開始し、62年に完成。高村光太郎賞を受賞し、日本を代表する彫刻家として活動した。その後もキリスト教をテーマにした聖女像や代表作「原の城」(72年)、「ダミアン神父」(75年)などを制作した。87年に脳梗塞に倒れ、右半身不随となるが、左手での制作を続け、2002年2月5日、89歳で死去した。この日は奇しくも日本二十六聖人の記念日であり、「長崎26殉教者記念像」の前では、2千人以上が参加してミサが行われたという。
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今回展示される一連のドローイングは「長崎26殉教者記念像」を制作過程だった昭和30年代に、木炭や鉛筆で紙に書かれたもので、これをもとに同像が制作された。1597年、豊臣秀吉の命令によって長崎の西坂で24歳で処刑されたフランシスコ会修道士フェリッペ・デ・ヘススや、パウロ三木、ルドビコ白衣、パウロ茨木などの信徒の処刑の直前の姿が描かれている。
また合わせて舟越が島原・天草の乱の舞台となった原城跡を訪ねて制作した代表作のブロンズ像「原の城」や、晩年脳梗塞で倒れ右半身不随となって左手で制作した「ゴルゴダ」も展示される。来年2月5日まで。
詳細は、長崎県美術館のホームページ。