ルーテル世界連盟(LWF)とカトリック教会は10月31日、スウェーデン南部ルンドのルンド大聖堂で、宗教改革共同記念行事「共同の祈り」を行った後、近郊マルメの多目的アリーナ「マルメ・アリーナ」で一般公開の行事を開催した。この中で、両教会の援助機関は、互いに協力するための「決意宣言」に署名。世界規模で支援活動を行う大きな2つの機関は今後、難民支援や平和構築など、さまざまな分野で協力を目指す。LWF広報部門のルーテル世界情報(LWI)が同日、公式サイトで伝えた。
マルメ・アリーナで行われた行事には約1万が参加し、インド、ブルンジ、南スーダン、シリア、コロンビアの5カ国から発題者が証言し、希望と励ましを必要としている人たちに手を差し伸べるため、両教会に一致を求めた。そして、LWF世界奉仕部とカトリック教会の国際カリタスが、より緊密に協力するため、決意宣言に署名した。
5カ国の発題者からの証言
環境運動家でルーテル教会の青年指導者であるスネミア・プラニタ・ビスワシさんは、洪水や干ばつにより住居を失い、貧困に陥ってしまったインドの何百万人もの人々のために提言活動を行っている。ビスワシさんは、「私たちは気候を変えることができませんが、でもシステムを変えることはできます。ですから全ての人たちのために1つのより良い世界をつくるべく、共に働きましょう」と呼び掛けた。
教皇フランシスコは、ビスワシさんに活動を屈せずやり通すよう励まし、自然環境に危害を加える乱用に対するビスワシさんの憂慮、またキリスト教徒が自らの信仰と常に一貫するべき生活様式や行動を見習うことへの関心を共有。そして、気候変動の影響により移住を余儀なくされている人々に最も大きな影響が出ていることを強調した。
LWF議長のムニブ・ユナン監督は、「私たち年配の指導者たちを気候変動に向き合う運動に改心させた」として、ビスワシさんや多くの若い運動家たちに感謝を示した。ユナン監督は、気候政策を形成する上で教会には力強い役割があるとし、キリスト教徒たちに沈黙せずに変革のために働き続けるよう促した。
マルグエリテ・バランキツェさんは、アフリカ中部の国、ブルンジで残虐行為の犠牲者となった孤児たちのために活動している。愛を持って孤児たちを教育し、暴力の悪循環を打ち破ることができる新しい世代づくりのために、どのように働きを進めているかを説明した。
教皇は、神と隣人に対するバランキツェさんの「愛の熱狂」に感謝を表明。教皇は、「私たちには、神の臨在のうちにおける信仰と確信によって照らされたこの熱狂がもっと必要なのです」と付け加えた。
南スーダン出身で「難民選手団」としてリオ五輪に出場したローズ・ナシケ・ロコニェンさんは、難民としての体験や、スポーツが彼女にもたらした希望や機会について語った。そして、「世界の指導者たちにどうか語り掛けてください。なぜなら私たちには平和が必要だからです。他の国々から家を追われた私たちが戻って再建を助けることができるように、私たちには教育が必要なのです」と訴えた。
教皇フランシスコはロコニェンさんに「若い女性たちに学校に戻るよう励ますあなたの努力とあなたの責務に、そして、平和をとても必要としている、南スーダンという若い国家の平和のためにあなたが日々祈っていることに、私は心から感謝します」と伝えた。
バランキツェさんとロコニェンさんの証言に対し、ユナン監督は、世界の4300万人の難民のうちの41パーセントが子どもであることなどに言及。自身もパレスチナ難民であるユナン監督は、全ての難民が自らの市民社会を築き上げることができるよう、彼らを教育し力を与えるLWFの責務を確認した。
シリア北部アレッポのカルディア・カトリック教会のアントイネ・アウド主教は、平和や宗教の役割について語り、「キリスト教徒であれ、イスラム教徒であれ、互いの尊重と最も貧しい人たちへの関心のうちに、(宗教は)尊厳や連帯、共通の善を求めるという人間の価値を守るよう促すべきである」と述べた。
教皇フランシスコは、厳しい内戦状態のシリアに留まり、物質的、霊的な支援を行っている人々の英雄的な行為に言及。「あの地域の運命について、責任ある人々の心からの回心という恵みを乞い願いましょう」と祈った。
ユナン監督は、シリアや争いで引き裂かれた他の国々のための祈りをささげた。そして、迫害されているキリスト教共同体の課題や、「平等な権利と責任を持つ平等な市民」でありたいという彼らの願いを強調。「善意ある全ての人々と提携して正義の交響曲を形成し、抑圧を助長する全ての者たちを妨げ」、声を1つにして語るよう呼び掛けた。
コロンビアのヘクトル・ファビオ・ガビリア司教は、「コロンビア革命軍(FARC)と署名が行われた(和平の)合意文書を実施するこの期間にあって、武力紛争を終わらせるという私たちの望みは高い」と語った。ユナン監督は、コロンビア国民に対し、「平和の好機をもたらしてください。あなた方の国民が尊厳と正義のうちに生きる好機をもたらしてください」と嘆願した。
ルーテルとカトリックの援助機関の新たな始まり
その後、ユナン監督と教皇フランシスコは、LWFとカトリック教会のそれぞれの人道支援機関であるLWF世界奉仕部と国際カリタスに対し、感謝を示すとともに、さらに大きな協力を求めるよう促した。この2つの機関はこの日、地球規模のキリスト教組織として、より関係を深め、人道的対応や持続可能な開発においてより緊密な協力をするため、決意宣言に署名した。
ユナン監督は全ての諸教会に対し、「旅人をもてなす」よう、そして各国に「政治的利益を脇に置いて神の子たち一人一人の尊厳のために働く」よう呼び掛けた。
教皇フランシスコは難民を支援してきた国々の政府に感謝するとともに、「出て行って、私たちの世界で見捨てられた人たちや辺境に追いやられた人たちに出会い、誰も拒むことなく皆を受け入れてくださる、神の優しくて慈しみ深い愛を感じさせるように」と、キリスト教徒にさらなる課題を投げ掛けた。
LWF世界奉仕部は、全世界で230万人を超える難民に奉仕しており、国際カリタスは164カ国で活動している。コロンビアでは既に2009年から活動を共にしており、民族間の対話を主導し、地域における平和の計画を推進している。今回署名された決意宣言では、難民・移民支援、その他の人道的対応、平和構築、宗教間の行動、持続可能な開発目標の共同実施など、多岐にわたる分野で協力を目指すとしている。
国際カリタスのミシェル・ロイ事務総長は、「人間の尊厳と社会正義のために活動している2つの地球規模のキリスト教組織として、排他的になることなく、希望をもたらし、共に証しをして行動するために、私たちは手を携えることに決めます。そして相方や友人たちに地域で関与するよう、私たちの会員に求めるために」と語った。
LWF世界奉仕部のマリア・インモネン部長は、この署名を「私たちの共同体や群れ、そして私たちの組織の間で増大した合同の行動の新たな始まり」だとし、「これは私たちの活動の延長としてより多くの人々に手を差し伸べ、全ての人々のために尊厳ある生活を可能にするのです。私たちの教会は私たちにこれを期待しているのです」と言い表した。
インモネン部長は、「私たちは、紛争や戦争の悪影響を受けている国々で、そして数多くの難民が移動しつつある所で、ますます多く活動を共にする機会を積極的に求めます。貧しい人たちは私たちにこれを期待しているのです。世界は私たちにもっと緊密に活動を共にするよう期待しているのです。私たちは自らの活動を共にすることを通じて、人類に希望や霊感、そして信仰をもたらす必要があるのです」と付け加えた。