「その翼には、いやしがある」(マラキ書4:2)
自分の若い時を振り返れば、至らないことばかりで恥ずかしい限りです。「伝道最優先」と叫びながら、大した伝道はしていませんでした。経済的不安定のために子どもたちには迷惑のかけっぱなしでした。
親として不十分な私たち夫婦を支えてくれたのは、海外や国内の祈りのグループのサポートでした。誕生日とかクリスマスには、祈りのサポーターから流行の最先端をいくような服とかおもちゃが届いていました。
米国の支持者からは、励ましの電話がよくかかっていました。「今、日本に行ってあなたの子どもたちをハグしたいけどできないから、代わりにハグしてくれ」ということでした。これはAさんの分、これはBさんの分といって何度か子どもたちをハグしました。
ある心理学者の報告ですが、「ハグすることによって精神的な悩みの3分の2は解決する」と言っています。
誰の心にもトラウマは存在するといわれます。ほとんどのトラウマは3歳か4歳までに形成されるといわれます。大人の何気ない一言に傷つくこともあります。育児放棄や愛情不足のために情緒不安定になることがあります。また、幼児期に受けた暴力のために、大人になってから暴力的な一面が出てくることがあります。
夫婦間のドメスティクバイオレンス(DV)は深刻な社会問題になっています。単に肉体的暴力だけでなく、相手の人格否定など言葉の暴力もあります。今までは夫から妻へのDVが問題になっていましたが、妻から夫へのDVも深刻な問題になっています。
夫婦間のDVは、ほとんどが幼児期に受けた暴力的な仕打ちによるトラウマが原因だといわれます。
人間の持つ基本的な性質、性格は0歳から6歳までに90パーセント形成され、小学校卒業時には99パーセントできあがっているといわれます。幼児期の体験が人生を左右するといっても過言ではないと思います。
暴行は体も心も傷つけます。言葉の暴力は、心を破壊し、生きる気力を奪ってしまうこともあります。しかし、家庭内の暴力は表面化することが難しいので、心の傷が深まり連鎖してしまうことがあります。心の深層部分を本当に理解し、癒やしてくださるのは、油注がれた者、十字架につけられたキリストだけではないかと思います。
「神である主の霊が、わたしの上にある。主はわたしに油をそそぎ、貧しい者に良い知らせを伝え、心の傷ついた者をいやすために、わたしを遣わされた」(イザヤ書61:1)
心の癒やしは、自分のありのままの姿を受け入れてもらうことから始まるといわれます。しかし、心に深い傷があれば素直になれずに、他人につらく当たってしまうことがあります。
そして、人を遠ざけ、1人の世界に入り込むことがあります。心の壁を打ち破る行為の1つがハグかもしれないと思います。アニマルセラピーによって癒やされる人もいます。動物をなでることによって癒やされることもあります。また、植物に触れることによって癒やされることもあります。
東日本震災の直後、震災被害者の救助の最前に立った方々にお話しをしていただいて災害援助を考えようということで、宗教者の集いで学習会が開催されました。関係各所の協力のもとに救助部隊やナースのお話しを聞けることになりました。
ところが、ナースは「私は無力です。何もできませんでした」と叫んで、泣き崩れてしまいました。その上司の方は、「彼女は誰よりもよく働き、一生懸命に助けようとしたが、犠牲者の数が多すぎて心が傷ついてしまった」と話していました。
救助隊の方も同じで体験談を話すことでつらい思い出がフラッシュバックしてしまうということでした。事態の深刻さが分かりました。
現在、熊本で地震が頻発し、物資の救援に関心が集まっていますが、被災者の心のケア、生活コンサルタントの問題だけでなく、最前線で働く人々の気持ちも考慮することが必要だと思います。
「わたしが疲れたたましいを潤し、すべてのしぼんだたましいを満たすからだ」(エレミヤ書31:25)
私たちの心の深層の癒やしは、神の前に祈りにおいて全てを打ち明けることと、同じ悩みを持つ方と気持ちを共有し、語り合うことではないかと思います。
「こういうわけですから、このことばをもって互いに慰め合いなさい」(Ⅰテサロニケ4:18)
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