日本聖公会管区事務所は、1月11日から15日まで英カンタベリーで開催された聖公会の世界的共同体「アングリカン・コミュニオン」の首座主教会議に参加した植松誠首座主教による正式な報告記事とコミュニケ(声明)の邦訳を公式サイトに掲載した。
同サイトにある1月25日付の「日本聖公会管区事務所だより」No.308号(2016年1月)の中で、植松首座主教は「聖公会首座主教会議に参加して―緊張感みなぎる中での開催―」と題する報告記事を著している。
その中で植松首座主教は、「首座主教会議ではアングリカン・コミュニオンがこれからも共に歩むことが確認されたが、米国聖公会およびカナダ聖公会のこれまでの一連のヒューマン・セクシュアリティー(人間の性)への取り組みが世界の聖公会の多くの管区において深い傷を与えたこと、また今回の米国聖公会の決定が、過去の首座主教会議、ACC決議、ウインザー・リポート、ランベス会議決議などを無視する一方的な進め方であったことが厳しく指摘された」と述べた。ACCとは全聖公会中央協議会のことを指す。
そして植松首座主教は、「その結果、米国聖公会に対して、今後3年間、アングリカン・コミュニオンの全ての部門、会議、ネットワーク、委員会などには正式参加をしないようにという勧告と、カンタベリー大主教に対して、今後この問題について検討するための特別委員会を設けることが提案され、これらの勧告・提案は大多数の首座主教の賛成で可決された」などと報告した。
植松首座主教によると、今回の首座主教会議では、多くの主教が、教会における、また聖書で定められている結婚とは男女間の忠実な、生涯にわたるものであるという点を強調し、そこから、米・加聖公会の同性婚の取り組みは正統信仰から離脱していると主張したが、首座主教の中にはそれらに真っ向から反対する者もあり、考え方や理解に大きな違いがあることも明らかとなったという。
1月14日に合意文書で発表されたこの問題(本紙の関連記事:アングリカン・コミュニオンの首座主教会議、合意文書を発表 同性婚問題で米国聖公会の意思決定参加などを停止)については、コミュニケの3、4ページ目にある「補遺A」にも掲載されている。
「私は、今回の首座主教会議の結果に関しては大変複雑な、重く沈んだ気持ちでいる。世界の聖公会が分裂せずに、共に歩むことは確かにうれしいことではあるが、その代償を見たときに、それがあまりに大きく、しかも正しいとは思えない」と植松首座主教はコメントしている。
また同首座主教は、「今回、キリストの愛の内に共に歩むというが、これらの勧告・提案の中に、性的マイノリティーの人々(LGBT)への思いやりは少しも感じられない。この勧告が、米国、カナダだけではなく、世界のLGBTの人々に深い痛みと悲しみ、また教会に対する不信を与えることを私は危惧している」と付け加えた。
その上で、植松首座主教は、「今回の首座主教会議の結果は、少しも問題解決にはなっていないし、これからも分裂の可能性は否定できない」と指摘。「米国聖公会がこの3年間で、先の総会の決議を取り下げることは考えられないし、カナダ聖公会では今年の総会で、米国聖公会と同じような決議がされるかもしれない。また、英国聖公会内でも激しい議論が起きているからである」と説明している。
さらに同首座主教は、「今後、アングリカン・コミュニオンの管区間でも、双方間の交流や対話をもっと充実していかなくてはならないであろう」などと述べている。