利益を得るよう説く牧師たちを非難する論客たちの意見を聞きながら、視聴者は、クレフロ・ダラー氏が説教壇で現金を集め、エディー・ロング氏が手に一杯の紙幣を目を丸くして眺め、T.D.ジェイクス氏がタイラー・ペリー氏の実践重視の祈りや100万ドル献金を歓迎する映像を見せられる。あからさまな非難はせず、これらメガチャーチの牧師たちが実際に、今の黒人教会を腐敗させている「繁栄の伝道師」たちの一人かどうかについて証拠を挙げているわけではない。視聴者はただ、良くも悪くも、これらの牧師たちが牧会によって私腹を肥やし、伝統的黒人教会の腐敗の象徴であると考えるよう暗に仕向けられる。
指摘すべきなのは――『Black Church, Inc.』の中でも指摘されている通り―― ダラー氏とロング氏は共に、2007年に米上院議会の財政委員会で、自分たちの伝道団体の非営利の立場を乱用した疑いをかけられた繁栄の伝道師6人に含まれていたということだ。『Black Church, Inc.』は、この6人の牧師たちは調査に協力して自分たちの財政的記録を公開する法的義務がなかったため、チャールズ・グラスリー上院議員が組織した調査は成果を生まなかったと示唆している。
『Black Church, Inc.』によれば、牧師たちの自己中心的な野心のせいで苦しんでいる教会の他の側面は、伝統的に黒人教会のリーダー達が活発に行ってきた地域社会へのアウトリーチ活動だという。
「多くの牧師たちは、自分たちは単なるスピリチュアルな指導者なんだと言って、地域社会の指導者としての責任を回避しています。そうではありません。彼らの教会に通うのはその地域社会の人々なのですから、彼らはその地域社会の指導者なのです」と、ウェブサイト「Church Folk Revolution」の創設者T・J氏は指摘する。
全米黒人教会イニシアチブの代表アンソニー・エヴァンズ牧師は、このような「スピリチュアルな指導者」に対する自身の意見をこう述べる。「実際の人間についても大義について何も語らず、福音を伝えるだけで、自分はそれを行動に移さないような牧師に、牧師としての価値はありません」
さらにこのドキュメンタリーでは、もしメガチャーチの牧師たちが自分たちが徴収した献金のほんの一部、あるいは「10分の1」だけを手元に残し、残りの90パーセントを寄付したら、そのコミュニティー全体が栄えるだろうという一般論がさらに語られるが、これらのメガチャーチの牧師たちの何人かが実際に行い、確かにその地域社会の益となっているようなアウトリーチ活動や社会的プログラムについては全く触れられなかった。
このように『Black Church, Inc.』は若干偏りがあり、時折その展開がスローになるきらいはあるが、アフリカ系アメリカ人の生活において黒人教会が歴史的にどのような意味を持ってきたか、そしてまた牧師になりたいと望む人たちにとって教会が今どのように利益を生み出す場となりえるかについて、強いインパクトを与えるものだ。
残念ながら、このドキュメンタリーが意図する非難そのものは、宗教をビジネスにする危険として長きにわたり多くのクリスチャンが指摘してきたことの焼き直しがほとんどだ。おそらく制作者のトッド・L・ウィリアムズ氏(脚本・監督・制作)は、繁栄の伝道師たちが行った怪しげな教えや行動によって実際に犠牲となった人々の声を取り上げるべきだったのだろう。そのような人たちの声の方が、このような繁栄の牧師たちの説教を聴いている信者たちにとって、論客たちの意見よりも一層、心揺らぐものとなったはずだ。
『Black Church, Inc.』は、6月30日にDVDと、デジタル・ダウンロード用に発売された。このドキュメンタリーの詳細はこちら。
■『Black Church, Inc.』の予告映像
■ 繁栄の福音説く牧師は、伝統的な黒人教会を破壊しているのか?:(1)(2)