北朝鮮の最高裁判所は5月30日、昨年10月にスパイ容疑などで拘束していた韓国人の男性宣教師のキム・ジョンウク氏に、無期懲役に相当する無期労働教化刑の判決を言い渡した。北朝鮮国営の朝鮮中央通信の報道として、複数の国内メディアが伝えた。
キム氏は今年2月に平壌で開かれた記者会見で、韓国の情報機関から現金をもらい、金正恩政権を崩壊させることを目的に北朝鮮に地下教会を作ろうとしたなどと話し、謝罪していた(関連記事:北朝鮮で拘束の韓国人宣教師が記者会見 「北朝鮮に地下教会を作ろうとした」)。一方、韓国はこれを否定し、キム氏の釈放を求めていた。
北朝鮮はこれまで、拘束した外国人を釈放する場合、公式謝罪をさせてから釈放するケースが多かった。そのため、キム氏も2月の謝罪会見後に釈放されるのではという見方があったが、今回の判決はこの見方に反する結果となった。国内メディアは、北朝鮮がキム氏を韓国との政治交渉の材料に利用する可能性があるなどと伝えている。
一方、北朝鮮は今年3月には、宣教資料などを配布したとして拘束していた香港在住のオーストラリア人男性宣教師ジョン・ショート氏(75)を、国外追放というかたちで釈放している。この際も、北朝鮮側はショート氏のものとされる謝罪文を公開して釈放している。
朝鮮中央通信によると、キム氏はこの裁判で死刑を求刑されていたが、謝罪していることや、身体の不自由な北朝鮮国民を援助したことがあるなどとして、弁護側は情状酌量を求めたという。
報道によると、キム氏は50代で、北朝鮮と中国の国境地域で脱北者らに布教活動を行っていたという。